#010 舟と灯台

 ――あのとき嵐が起こらなかったら、あるいは舟が頑丈にできていたら、舟はそのまま真っ直ぐ航海を続けたに違いない。火の消えかけたあの灯台は、舟が偶然見つけなかったら、誰にも気付かれず、ひっそりと朽ち果てたのではないか。あの灯台と舟の出会いは、ただの偶然に過ぎない。

 ――しかし、それが必然だっだとしたらどうだろうか。あらゆる物事が、舟をあの地に漂着させるように導いたのだとしたら。

 ――いや、そのようなことを考えるのはやめよう。私は結果として火を託されたのだ。偶然とも必然ともつかぬ、説明の困難な寄り道を経て。


 突然、あなたはなぜ、そんなことを思ったのだろうか? あなたはそれまでどこにいて何をしていたのだろうか。念のため、このパラグラフに来る直前のパラグラフに戻り、そこでどこへ行けと書かれていたかを調べてみること。

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