第10話 モクㇽゥとの交流

 それ以来、私が病室を覗くと、少女は笑みを浮かべてくれるようになった。


 彼女と親しくなるにつれ多くの事が窺い知れた。


 外見は十五歳程だが、知的に輝く瞳を見るに、魂は私の実年齢とそう変わらないのではなかろうか。


 言語は通じなかった。

 彼女はこの世界の言語でなく、私の元居た世界の言語でもない、言葉を話した。


 彼女の躰の持ち主の名は「モクㇽゥ」と言った。


 身体年齢十五歳で飽和まで至る事は珍しいが、転生の進行度は千差万別だ。

 先輩は「モクㇽゥは数年と持たないだろうね」と耳打ちした。




 私は、いずれ彼女が朽ちてしまうと分かっていて、果敢に交流の時間を持った。


 おこがましいと知りつつも、ただ寝たきりの彼女が笑顔になる時間を作ってあげたかった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る