第8話 晒し者

 患者の中に、自殺者が出た。


 その世界で自殺は悪だった。


 自殺をすれば、その躰は魂の器として意味を成さなくなり、新たに転生を受け入れる事はない。


 住人の躰は、国にとっての資本だった。


 転生してくる魂を受け止める受け皿の母数は多いに越したことはない。

 一人の躰に掛かる負担が分散され、異世界の有用な知識を持った魂が発見される確率も高まるからだ。


 しかし残念ながら、無情で冷淡なこの世界を受け入れられない者は多数居た。


 その時自殺したのは、外見は働き盛りの男性、魂は河童に近い種族だった。

 彼の躰は転生七回目前後だろうと予測された。


 彼は奇声を上げ、最期の力を振り絞り、自らの頭を病棟の壁に打ち付けたのだとか。




 彼の遺体は、病院の中庭に晒し者にされた。


 死してなお惨めになりたくない。

 住人たちのそんな心理を煽るための見せしめだった。





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