第7話 恋を封じた

 気になる人が出来た。


 俺に仕事を教えてくれる、看護師の女性だ。

 生前私が好きだった人と雰囲気が似ていた。


 ある昼下がりの事。俺は仕事仲間と雑談に参加していた。

 そこに気になっている女性もいた。


 冗談が興に乗り、その勢いで彼女は私の肩に頭を寄りかからせ、腕を絡めた。


 彼女の柔らかな胸が私の肘に押し付けられた。(彼女は事前に、私の属していた社会では身体的魅力がアピールポイントに成り得る事を、私から上手く聞き出していた。)


 私は怖気立った。突き飛ばしたい気持ちだった。


 私は彼女の中に下心を見出した途端に気持ち悪くなったのだ。

 思えば、生前も男性を嫌悪する時は相手が性的な思惑を匂わせた時だった。


 そうか。私は女性が好きなのではなく、情欲の対象となる事に苦痛を感じていたのか。


 だから以前は、同性故に純粋な好意を向けてくれた女性に惹かれたのだ。

 それがこの出来事で一変してしまった。


 結局は私に、躰を含めた自分の全てを許す覚悟もなかったという話だった。

 自分が恥ずかしくなった。なんと幼稚な恋愛観……。


 私は、恋を封じようとひそかに決めた。





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