第6話 病棟での仕事

 同僚の介護士に肘で脇をつつかれた。


「どうだ、ピヴルィ。元気かい? お前は転生は何回目だ?」


「あー、えー、おれは、」


 回数なんて分からない、と答えたいのだがどんな発音だったか。

 私が答えるより速く質問を重ねられた。


「頭はどんくらいすっきりしてる?」


「あー、少し見える方ぼやける」


「てことは、転生四、五回てとこか」


 どうやら転生を繰り返した躰は、思考まで鈍っていくらしい。

 瓦解は、脳機能の低下まで伴うのか……。




 ひと月を経て、仕事を一通り覚えると褒められる機会も出てきた。


「気が利く」「格好良い」と言われると、自分の立ち振舞いが好意的に受け取られたという事だと思えた。


 この躰の持ち主には悪いが、正直“俺”の外見は特出して整っている事はなく、まあ凡人だ。

 だから、褒め言葉は内面の“私”に向けられたのではないか、と浮足立った。


 以前つまりは女性でありパートタイマーだった頃は「冷たい」や「逐一理詰めで怖い」と嫌煙された。

 それが男性になると褒め言葉に早変わりだ。


 気分は良かった。

 肉体労働は体力も精神力もり減らしたが、俺の苦労を見てくれて、頑張れば評価してくれる同僚や先輩や患者が居るだけで報われた。





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