11 シュエルドラッド会合②
「そもそも二国制を廃しては?」
アヴィンが切り込んでも、
「民心がそれを許すものか」
「案外わかりませんよ。例えば、両王家が一つになる、とか」
そこでやっと、
「あいにく候補となる縁組がない」
「王女がいらっしゃるでしょう」
「既婚者だ。神に結ばれた縁、そうやすやすと反故にはできぬ」
「しかしそれを結んだのは、我々波の民の神ではない」
「詭弁だ。この地はもとより三神の地」
「まあそれもそうだ」
呆気なく言い負かされたアヴィンに拍子抜けしたのはヴァンだけではないようで、あの強面の
「単刀直入に言えば、我が国の要求は三つ。補償、独立、発展。一つ目は合意ができそうだが、後の二つはいかがか」
「独立に関して申すが、果たして民が付き従うだろうか。得体の知れぬ魔人の力で王位を簒奪した王に」
「ああ、ご心配には及ばない。前王からは友好的に譲位を受けているし、波の民は波の加護を崇拝している節があるので」
「自国の民を揶揄するように言うのだな」
「北方統治は波の民……つまり
「……再独立、か。だが先ほどの言葉の節々からは、それ以上の大望が滲み出ていたが」
「当然でしょう。捕虜を得た我が国は優位に交渉を進める立場にある。中庸な合意に満足するなど、もったいない」
「北の偽王は貧乏性のようだ」
「南の老王は隣人を見下すのがお好きなようで」
暫し睨み合う二人の王。
「……もう結構。あなたの主張は分かった。茶番はやめましょう」
アヴィンは
「これらがサシャへの要求。署名と王爾をいただきたい」
「何と強引な」
「それでも、あなたは従うしかないはずですよ。……さあ、伯父上」
会話の外野になっていたレイヴェンジークだが、不意に呼ばれたにしては準備良く、机上に書簡の束を五つほど、無造作に置いた。
「それは」
「覚えておいでですか、陛下」
レイヴェンジークが、かつての宗主に向けて、静かな目を向ける。
「なぜこれが、まだこの世にあるのかと思っておいでですね。私が、あなたの
「……複製か」
「火に投げ入れた方が、ですがね」
ヴァンには、話が読めない。だが
「岩波戦争の過ち。これを国民に公表したら……どうなるでしょうか」
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