第3話 ほめと怒り
集合場所に近づくにつれて人々が楽しむ声、祭り囃子の賑やかな音色が響いてくる!!
私、人混みは好きじゃないけど夜店は好きだなぁ!
それにとってもいい匂い!
気分もわくわくしてくる!
昔よく連れて行ってもらった夜店で、射的や金魚すくいをしたり、あまーい艶やかなりんご飴やその当時流行った人気のキャラクターの袋に入ったふわふわの白い雲のような綿菓子…おいしかったなぁ!
たくさんの人達が賑わう中、夜店の入口に若者達が…。
「あっ!ゆうちゃん、こっちこっち!」
ともうすでに来ていたみゆちゃん、なっちゃんと男子組…京也くん、赤井くん、黒崎くんが集まっていた。
みゆちゃんは淡いピンク地に色鮮やかな黄色が光るひまわりがたくさん散りばめられた浴衣!
なっちゃんは水色地に白いユリの花がほどこされた清楚な浴衣!
2人ともほんとにイメージどおりなんだからー!!
「ごめーん…遅くなって…。浴衣に手間取っちゃって…。」
「ゆうちゃん…可愛い…可愛いよ!すっごく似合ってる!さらに背が高くスラッと見えるしカッコいい!」
と満面の笑みでゆってくれるみゆちゃん!
実はグサッと痛いとこつかれちゃっても…
このみゆちゃんの嫌みのない、嘘をつけない天然さもまた…
可愛いくて憎めないんだよね…。
「あ、ありがと!こんな格好めったにしないし…なんか恥ずかしいよ…。」
本当だった…。
普段もスカート系よりパンツ系選んじゃう…。
ペタンコ靴が多いから…。
「ねえねえ、きょうちゃん達もそう思うでしょ?」
と半ば強引に男子たちに答えを求めるのだけはやめてほしい…。
「おう!可愛いし似合ってる!なぁ、お前ら?」
と京也くんまで…。
もういい…やめて…と私は心の中で呟くしかなかった…。
「可愛いよ!白瀬さん背が高いから浴衣がすごく似合うよ…。」
「あ、ありがとう…。」
と片想いの赤井くんから。
ショック…は隠せないけど似合うといわれてやっぱりそれは嬉しい!
もちろん赤井くんに悪気はないことは重々承知…。
でもやっぱりこの背が目立つんだよね…。
だって下駄を履いたら180cm近くあるんだもん…そりゃ、みんな驚くよ…。
私のうかない表情に気づいたのか…なっちゃんがそばにきて…小声でいう。
「ほんと素敵だよ!2人も悪気はないんだし気にしない!気にしな~い!」
と励ましてくれる。
「うん!」
なっちゃんはほんとに頼れるなぁと心からそう思った!
その時…私は黒崎くんと目が合ってしまった!
でも…すぐに目をそらしてしまった…。
私のばか!なんですぐ目をそらしちゃうのよー。逆に気まずいじゃん…。
すると…
「いいんじゃね…。」と黒崎くんが無表情で小声でいう。
黒崎くんは苦手だけど…でも…なんだろ?ちょっとうれしい…かも。
それをみていたみんなはちょっとびっくりしていたようだった。
「なんだよ!純、女子とはめったに話さないお前でもそんなこと言えんのな?もしかしてでかい白瀬のこと女子と思ってないとか!ははは!」
私の心はちくん…と痛んだ。
そういった京也くんの胸ぐらを黒崎くんはとっさに掴んでいた。
「お、おい…冗談だよ…。何怒ってんだよ?」
他のみんなにもさとされ、すぐに離したが黒崎くんの表情は曇っている。
ちょっとからかわれただけで胸ぐら掴むなんてやっぱり…ちょっと怖い…。
「もうやめようよ!きょうちゃんも冗談が過ぎる!ゆうちゃんと黒崎くんに謝って!せっかくのお祭りなんだし気分なおしてみんなで楽しも!ね!」
みゆちゃんが彼氏の京也くんを注意し状況をまとめた。
ほんとはその役回りはなっちゃんだったりするのにすごい!
さすが彼女さんだ…なんて感心してる私はそんなみゆちゃんがとても頼もしく見えた。
普段が天然な女の子なだけに…。
その横でさらになっちゃんが驚きの顔をしているのが印象的!
たぶん私より驚かされたのだろう!
「悪かったよ…純…白瀬…。」
黒崎くんは黙っている。
「あー、私は気にしてないから!それにでかいのはほんとのことだし…。」
と言わないくてもいい自虐セリフをついついいってしまう自分が…嫌いだ…。
スタートからなんか妙な雰囲気になっちゃったけど…
気分一新して私たちはこの夏、最後の夏祭りを楽しむことにした…。
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