第4話 楽しいはずの切ない夜店


先頭にみゆちゃんと京也くんが楽しそうに歩いてる!

もう、この2人だけの世界作っちゃって!いいなぁ…。


その後ろを私となっちゃんが…。

最後尾に赤井くんと黒崎くんが歩いてる。


歩く先々の両側から夜店の食べ物のいい匂いや音、射的で子供たちがは楽しくはしゃぐ声、りんご飴をほおばる子供の手をひきながら楽しそうに歩く親子連れの姿…。


そして…並んで手をつないで嬉しそうに歩くほほえましいカップル…。

こんなふうに好きな人と並んで歩けたらどんなにいいか…。


私はそんなことを考えながらそのお祭りの雰囲気に酔いしれていた!



そのとき夜店の一画に金魚すくいが見えた!


「わぁ!金魚すくい!私、好きなんだー!ね、なっちゃんやらない?」


私はなっちゃんにそういうと…なっちゃんは少し考えているようだったが…うんと答えた。


赤井くんと黒崎くんはそんなの興味がないとばかりに向かいの石垣の下で待ってると。

みゆちゃんと京也くんカップルはもう先にいっちゃてて自由に楽しんでいるみたい!


私となっちゃんは入れ物と金魚をすくう道具のポイをもらう。


するとなっちゃんが「ちょっと待ってて!」といって男子たちが待つ場所に向かっていった。


しばらくして…なぜか赤井くんがポイをもってこっちにくる!


「えっ!なんで赤井くんが?なっちゃんは?」


赤井くんは少し困った顔をしながら…

「青野さんは…なんか…魚が苦手だから僕に代わってほしいって…一緒にいい?」


「も、もちろん!どうぞどうぞ!」


私が向かいの方向を見ると、黒崎くんの横にならんでなっちゃんが笑顔で手を振っている。

なっちゃんが金魚とか魚が嫌いなんてきいたことがない!だって家で飼ってるくらいなんだもん…嘘だ!


さてはもう協力作戦が始まってるー?


赤井くんが私のすぐ隣に座る!


ちょっと…すごく緊張するんですけどー!

どうしよ…なっちゃん…金魚すくいどころじゃないよ…。


「白瀬さんは金魚すくい得意?」


「えっと…得意かはわかんないけど…好き…かな…。」


「じゃあ、どっちがたくさんすくえるか競争しようか?」


「うん!」


そうして私は赤井くんと金魚すくいの競争をすることになったのだが…。


「あーあ、破れちゃった…。7匹かぁ…赤井くんは?ん?」


赤井くんをみると1匹すくってはいるが、まだ破れていないポイを片手に向かいの2人のいる方を見つめている。


なっちゃんが黒崎くんに笑いかけている様子を赤井くんは真剣なまなざしで見つめていたのだった…。


これって…。



「赤井くん?」


赤井くんははっと我に返った様子で…


「ああ…ごめんごめん…白瀬さんすごいなぁ!ぼくはいいからこれ使って!」


とちょっと動揺している様子で私にポイを渡してくれた。

「あ、ありがとう!」


といって水に浸すとすぐに破けてしまった…。


「残念だったね…でも白瀬さん金魚すくい上手なんだね!」と笑いかけてくれたけど…

私はなんとなく…気づいてしまった…赤井くんの想いに…。


私たちは2人が待つ場所にもどった。


「どうだった?楽しかった?」


なーんて聞いてくるなっちゃん…。


「うん、楽しかった…ありがとう。」


その少しテンションの低い言い方に違和感を感じている様子のなっちゃんだったが…少し首をかしげただけでそれ以上なにも聞いてこなかった…。


そのまま私たちは夜店の先を歩いた…。

すると進行方向に向かって左側に神社へとつづく石階段が見えてきた。


これだ!

母さんがいってた神社って…。

でもここの神社ってもう…ほどんどだれも近づかない感じだよな…私も小さいときに行ったきりだし…。


ちなみにこの夜店を抜けたちょっと先に広い河原があり、そこで盛大に花火大会が行われる。

その河原もきれいに整備されててみんなそこへ集中して花火をみにくる!


昔は神社の境内もにぎわっていたんだろうけど…考えたらこの長い石階段を登るのだけでも大変そうだ!

ましてや浴衣姿の女の子じゃ…きっと敬遠するだろう…。


そんなことを考えていると…


「私、ベビーカステラ好きなのよね!買ってくるから待ってて!」


といってなっちゃんが店の方へ駆け出そうとした瞬間、下駄がつまづきバランスをくずし倒れそうになったのをそばにいた赤井くんがとっさに抱きかかえた!


「大丈夫?」


といった赤井くんの表情は真剣になっちゃんを心配していて…私が声をかけられる隙間もなかった…。


「あ、ありがとう…。」


なっちゃんも驚きと戸惑いの顔をして少し頬をピンク色に染めながらうつむいて言った…。

それから何事もなかったようにベビーカステラの店の前へ。


そんななっちゃんをみていてふと、子供たちの楽しそうな声でにぎわっている真向いの射的の店をみる。


そこには所狭しと並べられた景品の数々と正面に並べられたいろんな人形に番号がふられた的にコルク玉を懸命にあてている子供たちの姿が…。


これもほんと楽しくてわくわくするんだよなぁ!


と景品の上のほうにひときわ目立つ白いビーチサンダルが!

かわいい!

真っ白いサンダルに大きな青いアサガオの飾りが真ん中についてる!私の浴衣青いアサガオだしこれって偶然?


あれ…履いたら…ちょっとは背が低くみえるかな…。

赤井くんに…かわいいって思ってもらえちゃったりするのかな…。


なんて自然に考えてた。

気がついたら店の前にいて…


「おい、なにやってんだよ。」


と黒崎くんに声をかけられた。


「あっ…ごめん…ちょっとぼーっとしてた…。」


「なんかほしいもんでもあんのかよ…。」


「えっ!ううん、なんでもないよ…ごめん…。」


なんてやりとりをしていたら、なっちゃんと赤井くんがこっちにくる。


「ゆうちゃん、どうしたの?はいこれ!ベビーカステラ!みんなでだべよ!」


と笑顔でカステラをみんなに分けてくれる。


そのまま…後ろ髪引かれる思いはあったけどその場を後にした…。

少し先でみゆちゃんと京也くんが待っていた。


「やっときたー!こっちこっち!」


とみゆちゃんが手まねきしている。


「お前ら遅いぞ!おれたちがどんなに待ちくたびれたか…。」


と京也くんがおふざけでいった!


「なにいってんだよ!仲良く2人きりで歩いていったくせに!」


と赤井くんが笑顔でめずらしく京也くんとみゆちゃんをひやかした!



そんな明るい赤井くんをみて…私は逆に少し不安を覚えたのを心で感じとってしまっていた…。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る