秋の空を見ていると

@yurag1

秋の空を見ていると

 秋の空を見ていると死にたくならないか。俺はなる。オレンジに染まる雲が俺を置いてお気楽に流れていくんだ。


 その時は駅のホームで電車を待っていたわけ。あの簡素で寂れたあそこだよ。待合室すらもないそこでスマホも電池切れとくればもうひらけた空を見上げるしかない。

 俺は動けないってのに悠々自適に雲の軍勢がお通りなさるわけ。うころ雲だかひつじ雲だか、ぞろぞろ引き連れて進むうちに列を乱す輩が現れたりすんのよ。それでも構わず奴等は俺を差し置いて帰っていく。まあ雲が帰結すんのは雨だろうから落ち行く人生、雲生か。

 あまりに気ままに流れるもんだから首を痛めちまった。この意識、魂だけでも身体から抜け出せればこの痛みからも解放されるかね。

 そのまま雲軍団に混ざるか。いやせっかく解放されたならそいつらとは離れて孤高に浮かびたいもんだ。孤独を感じるようになれば他のやつらと徒党を組めばいい。いずれ滴になって落ちていけば地面に染み込むだろう。

 お前の眠る場所までいけるかもな。


 秋の空を見ていると死にたくならないか。俺はなる。俺を置いて流れるひつじが、形を崩すうろこが、美しいオレンジに染まるその姿が、独りでいる俺を惨めにさせるから。

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