第14話
トクントクンと規則ただしい脈を感じ取る事ができて、ホッと胸をなで下ろす。
「これなら大丈夫でしょ」
ちゃんと心臓は動いているのだから、心配する必要はない。
「おい、ちゃんと確認しろよ」
「和人、置いて帰るよ?」
慌てた様子でそう言う和人に声をかけて、あたしはそのまま部室を出たのだった。
☆☆☆
それから1時間後のことだった。
和人からメッセージが届いていた。
《和人:今すぐ部室に来てくれ》
普段からあまりメッセージのやりとりをしない和人が、こんな風に連絡をしてくるなんて珍しいことだった。
よほどのことがあったのだろうと、予測が付いた。
もう私服に着替えてしまっていたけれど、あたしはすぐに制服に着替えて、家をとびだしたのだった。
☆☆☆
部室へ入ると、そこにはリ修人の姿もあった。
青ざめた顔でうつむいている。
「ちょっと、なにがあったの?」
そう言いながら修人に近づくと、机の陰に隠れていた和人の姿が見えた。
しゃがみ込んだ和人の隣には、明日香がいる。
明日香は目を閉じて眠っているように見えた。
なによ、まだのんびり寝てたの?
さっさと起きれば?
そんな嫌味を言おうとして一歩近づいた瞬間……明日香の顔に血の気がないことに気が付いた。
唇まで白い。
「死んでるんだ」
和人が震える声でそう言った。
「え?」
あたしは聞き返し、同時に和人の隣に膝をついて座った。
明日香の首筋に手を当ててみると、暖かさを感じる。
でも、脈を感じることはできなかった。
今度は明日香の胸に手を当てる。
心音を感じることも、呼吸を感じることもできない。
ようやく事態を理解して、全身から血の気が引いて行くのを感じた。
死んだ。
あたしたちが殺してしまったんだ。
「どうすんだよこれ……。俺たちが殺したんだ!」
「うるさい!」
叫ぶ修太にあたしはそう言い、睨み付けた。
「和人は、ずっとここにいたの?」
「あぁ。もしかして死ぬんじゃないかと思って、ついてた」
和人はそう言い、頷いた。
「それなら、他の人にはまだ気が付かれてないんだよね?」
「そうだ、気が付かれてない」
それなら、まだ大丈夫だ。
あたしは少しだけ安堵して明日香を見下ろした。
窓の外は随分と暗くなってきているから、早く学校から出た方がよさそうだ。
「ここで待ってて」
あたしは2人へ向けてそう言い、部室を出たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます