第42話 美沙希の気持ち
川村美沙希は自分の気持ちがわからない。
琵琶カズミに対してなんらかの暖かい気持ちを持っていることはわかっている。
しかしそれが友情なのか愛情なのかわからない。
たぶんその間で揺れているのだ。
ふたりで釣り雑誌編集者の取材を受けた。
カズミは私の大切な釣りの
友だちだ。
親友と言っても過言ではない。
でも恋人ではない……。
カズミは私を助けてくれた。
カスミガウラに落水して、私は溺れた。死にかけた。
カズミは湖に飛び込んで、私を救ってくれた。
命の恩人だ。
私はカズミに報いなければならない。
もし告白されたら……。
恋人としてつきあってと言われたら……。
どう答えたらいいのかわからない。
恩に報いるために、恋人になるの?
愛しているかどうかわからないのに。
私は恋をしたことがない。
カズミに向けているこの胸が熱くなるような気持ちが恋なのかどうかわからない。
友情があるのは確かだ。
友情と愛情のちがいがわからない。
私はカズミを愛しているのだろうか?
もうすぐ夏休みが来る。
アルバイトしたいな。
ルアーを買いたいし、釣り旅行にも行きたい。
カズミと一緒にバイトできたらいいな。
旅行にもふたりで行きたい。
海がいいな。
海釣りをしてみたい。
富士五湖もいいな。河口湖とか山中湖、西湖に行ってみたい。
クリアウォーターのバス釣りを体験したい。
桧原湖とかでもいい。
裏磐梯の湖でスモールマウスバスを釣りたい。
水郷にはラージマウスバスしかいないから……。
香川県の野池を巡る旅もいいな。
小豆島にもブラックバスはいるらしい。
すれていなくて、爆釣できるというネット情報があった。
美沙希は根っからの釣りガールだ。
カズミのことを考えていたのだが、いつのまにか釣りのことに思考が移っていた。
「またカズミと釣りに行こう。近場でいいや……」と彼女はベッドに横たわりながらつぶやいた。
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