第43話 雲呑麺水郷大勝軒

 水郷高校は7月20日から8月31日まで夏休みとなる。

 7月17日には期末試験の答案用紙が返却されてきた。

 美沙希もカズミも全科目平均点以上を獲得した。目標達成。ふたりとも得意科目はかなりの高得点を取り、総合成績で学年50位前後となった。

 真央に至っては、全科目トップクラスの点数で、総合成績は学年で3位。彼女は1位を狙っていたようで、この好成績でも悔しがっていた。

 7月19日には体育館で1学期の終業式が行われた。

 生徒たちはあくびをこらえて校長の長いあいさつを聞いた。

 美沙希はこの後どこに釣りに行くかを考えている。


 終業式後には各クラスでホームルームが行われた。

 通信簿を受け取る。

 美沙希は国語と英語の評価が高い。

 カズミは数学と物理が高く評価されている。

 進路を考えるときの参考になる。

 美沙希はまだ大学進学のことを考えていないが、カズミは理数系の学部に進もうかと考えている。

 東京にある大学の理工学部などが候補だ。

 カズミは美沙希にも東京の大学に進学してほしいと願っている。彼女とルームシェアするのが、カズミの理想の大学生活だ。

 そのことはまだ美沙希には告げていない。

 ちなみに真央はズバリ東京大学をめざしている。学部学科はまだ決めていない。


 1学期が終わった。

 生徒たちはものすごい解放感に満たされていた。

 あちらこちらで「夏休みどうする?」という声が上がっている。

 水郷では8月に祭禮や花火大会が行われる。

 誰と一緒に行くかは大事な問題だ。


「とりあえず昼食にしたい。お腹すいた」と美沙希が言った。

「何を食べる?」

「駅前に美味しいラーメン屋さんがある」

「またラーメンか。いいけど」

 美沙希とカズミは自転車に乗って、駅前のラーメン屋さんをめざした。

「水郷大勝軒」というのれんが下がっていた。

「ここはね、ワンタン麺が美味しいの」と言いながら、美沙希がのれんをくぐる。

 食券を買う。

 中華そば 750円。

 ワンタン麺 880円

 チャーシュー麺 950円

 美沙希は雲呑麺をチョイス。

「どれも醤油味の清湯スープ。麺は中細のストレートで、量は多め。煮干し出汁が効いていて、美味しい。ワンタンは皮がチュルリとしてる。ワンタンは具ではなく、皮の食感を楽しむものだと私は思う」

 美沙希がうんちくを述べた。

「あたしもワンタン麺にするよ」


 カウンター席とテーブル席があり、ふたりはテーブル席に案内された。

「麺かため、ねぎ多めで」と美沙希が店員に伝えた。

「あたしも同じで」とカズミは言った。

「麺かため、ねぎ多め、雲呑麺ふたつうけたまわりました!」と若い男性の店員が答えた。

 店内には煮干しの香りが漂っている。


 5分ほど待って、白い大ぶりの丼がふたつ運ばれてきた。

 チャーシュー1枚、ワンタン数枚、ナルト1枚、海苔1枚が浮かび、薬味のねぎがたっぷりと散っている。

 茶色くて透明なスープには油が浮いている。カズミはひと口飲んでみた。熱々で美味しい!

「これはいける!」

「でしょう」

 煮干しの出汁が柔らかくスープに溶けている。煮干し粉は使っていないので、スープは濁っておらず、醤油の色が少しついているだけで、透き通っている。

 ふたりはずずっと麺をすすった。

「美味しい」

「美味しい」

「ワンタン柔らかい!」

「チュルリ!」

 

 またラーメンで大満足。

 美沙希の食生活につきあっていたら太るかも、とカズミは危機感を抱いた。

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