第41話 カズミの気持ち

 琵琶カズミは川村美沙希を愛している。

 純度100パーセント混じりっけなしの恋愛感情だ。

 瞳にハートマークを浮かべて美沙希を見ている。


 美沙希が落水したときは、ためらわずに救助できた。

 そのことが誇らしい。

 あたしはあの子を助けたんだ。

 彼女に何かあったら助けると決めていたけれど、本当に実行できるかどうかはわからなかった。

 実際に助けることができた。

 よかったなあ。

 美沙希の命を、あたしは救った。


 あのとき、人工呼吸というかキスというか、唇と唇をくっつけた。

 あの子の唇の感触は甘美だった。

 またしたいよ……。


 恋心は募るばかり。

 愛してる。大好き。

 その言葉はまだ伝えていない。

 わたしは女の子が好きな女の子……。

 同性愛者だということも言っていない。


 言えない。

 拒絶されるのが怖くて言えない。


 もうすぐ夏休みが来る。

 あたしは美沙希との距離をもっと縮めることができるのだろうか?


 期末試験の答案用紙と通信簿をもらったら、夏休み。

 釣りには一緒に行けると思う。

 8月に開催されるイタコ祇園祭禮や水郷イタコ花火大会をふたりで見ることはできるだろうか。

 イタコ市民プールにも行きたいな。

 できればふたりで旅行にも行きたい。海でも山でもどちらでもいい。

 お金がないな……。

 釣り具を買いたいし、旅費も貯めなきゃ。

 バイトしようかな?


 ああ、美沙希と会いたいよ。

 もっともっと心の距離を縮めたい。

 できれば身体の距離も。

 触れあいたい。

 恋人にしたい。

 恋人になりたいよ……。

 カズミは自宅の布団の中で、美沙希のことを想いつづけていた。

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