第39話 鯉と臨時収入
来週から期末試験が始まる。
真央と美沙希とカズミの勉強会はつづいている。
真央は平日も休日もガリ勉している。
美沙希とカズミは平日は勉強をがんばっているが、休日は遊んでいる。釣りだ。
7月最初の土曜日もふたりでフィールドに出た。
まだ梅雨がつづいているが、この日は晴天だった。
日差しがきびしい。
ふたりともTシャツを着ている。
美沙希は速乾の登山用Tシャツ。白地に黒で「富士山」と書いてある微妙なロゴのシャツだ。
カズミはサバイバルゲーム用の迷彩柄Tシャツ。下はダメージデニム。脚線美がわかるぴったりしたパンツで、太ももの肌が一部露出していて、カッコいい。
ふたりとも顔と首と腕に日焼け止めを塗っている。
「最初はどこに行きたい?」と美沙希が訊いた。
「えっ、あたしが決めるの?」
「今日はカズミがリードして。私は従う」
「じゃあ、キタウラに行ってみたい」
「いいよ」
カズミがスマホで地図を見た。
先頭に立ち、自転車を走らせる。
ジングウ橋に到着。
茫漠たる湖が広がっていた。
早速釣り始める。
南下しながら、ふたりともソフトルアーを使って、岸沿いを攻めた。
「浅いね」
「浅すぎる」
あたりがない。
しだいに湖の幅が狭くなり、キタウラがいつのまにかワニ川になっていた。
水深が深くなってきた。
やがてマエ川がワニ川に流れ込む水門に至った。
「ヒット!」
美沙希のスピニングロッドが大きく曲がった。
ジジジーとリールが音を立てて、ラインが引き出されていく。
「でかいよ、この魚」
慎重に寄せる美沙希。
魚が見えてきた。
ブラックバスではなかった。鯉だ。
「でかすぎる……」
20分はファイトした。
獲った鯉は70センチの大物だった。
カズミが鯉を両手で持つ美沙希を撮影した。
迫力がある写真が撮れた。
彼女はその写真を添付したメールを小鳥遊優に送信した。
電話がかかってきた。
「いまどこにいるんだ?」
「ワニ川水門。マエ川の流れ込み」
「15分で行くから、その魚をキープしておいてくれ」
小鳥遊が四輪駆動車に乗ってやってきた。
でかい鯉を持つ美沙希を一眼レフデジタルカメラで撮影する。
「これで昼飯でも食ってくれ」
小鳥遊は美沙希に3千円を渡し、あわただしく帰っていった。
「臨時収入。ラーメンをおごる」と美沙希が言った。
「やったー」と喜ぶカズミ。
ふたりはラーメン純樹に行った。
美沙希は塩バジルラーメン大盛り。
カズミはしょうゆ坦々つけ麺大盛り。
「旨ーい」
「旨ーい」
彼女たちはしあわせだった。
来週の期末試験のことはすっかり忘れていた。
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