第32話 50アップへの道
もしカズミに告られたら、なんて答えるか。
美沙希はさんざん考えて、答えは出ないという結論に達した。
答えのない問題で悩んでいても意味はない。
目の前の問題と目標に集中しよう……。
美沙希は学校へ通い続けた。
昼休みも教室に留まり続けた。
顔色はかなり悪いのだが……。
「美沙希、だいじょうぶ?」
カズミは美沙希が心配で仕方がない。
「だいじょうぶって、何が?」
「体調とか精神状態とか」
「だ、だいじょうぶよ。まったく全然問題ないわよ」
「声が震えてるよ?」
学校は相変わらず嫌いだ。
でもカズミと一緒にいれば、いじめられはしないということもわかってきた。
「学校は通い続けるよ。そして、釣りの目標も果たすから」
「目標って?」
「今シーズンこそ、ランカーを釣る。50アップを釣り上げる。狙ってデカバスを釣るんだ」
「そんなことできるの?」
「小バスには目もくれない。デカバス狙いのルアーを使う。大きいワーム、大きいハードルアーだけ持ってフィールドへ行く。その分ノーフィッシュのリスクは高まるけど、かまわないわ」
「その釣り方、あたしもつきあおうか?」
「カズミにはまだ早いわ。あなたはもっと釣って、経験値を高めて。基本に忠実に釣りをしてほしい」
「わかった。でも釣り場には一緒に行こうね」
カズミはいつも釣りにつきあってくれる。
美沙希はしあわせだった。
かつてないほど充実した日々を過ごせている。
毎週土日に、美沙希とカズミは水郷のバスポイントをランガンした。
美沙希はデプス社のビッグベイトを多用した。
でかいルアーにはでかいバスしか食いつかない。
狙ってランカーを釣るという信念を持って、でかいルアーを投げ続けた。
しかしデカバスは生息数が少ないし、警戒心も強い。
そう簡単に釣れるものではない。
ノーフィッシュの日々が続いた。
一方、カズミはノーシンカーリグもマスターして、絶好調だった。
釣り人が多く、魚へのプレッシャーが高い水郷地帯で、ほぼノーフィッシュなしの日々を過ごしている。
「あなたはもうりっぱな中級バサーよ」と美沙希はカズミを認めた。
ビッグベイトを投げまくる美少女川村美沙希とライトリグで手堅く釣る巨乳少女琵琶カズミは、水郷のアイドルアングラーとしてバサーの間で有名になりつつあった。
声をかけると、美沙希は顔面蒼白になって逃げてしまうのも知られていった。
ふたりを黙って見守るのが、水郷バサーのマナーとなった。
ゴールデンウイーク後の5月中、美沙希はついにノーフィッシュだった。
6月最初の土曜日は雨だった。
美沙希とカズミはレインウェアを着て、フィールドに出ていた。
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