ダン小隊長とキルケゴール

フォレストガンプに出てくるダン中尉は、代々軍人の家系に生まれ、自分も祖国のためにベトナムで死ぬのだと信じていた。

しかし、運命は彼をベトナムで死なせはしなかった。ガンプが瀕死の彼を救い出し、ナパームの炎から守ったからだ。


両足を失った彼は、ガンプを恨んだ。自分は部下と共にベトナムのジャングルで死ぬべきだったのだ。その運命をお前がぶちこわした。俺はどう生きればいい?


ダン小隊長は荒れた。車椅子に乗りながら、売春婦を抱き、道ゆくタクシーに悪態をつき、酒に溺れた。でも、彼はガンプを馬鹿と言う人間を許さなかった。


ダン小隊長はガンプに誘われ、ガンプの戦友だったババの故郷でエビ漁を始めた。ガンプが船長で、ダン小隊長は一等航海士だ。いつも漁はうまくいかなかったが、ある日、ダン小隊長は神様と仲直りした。


その日からエビは大漁で、ババガンプ社は大きく成長した。ガンプが幼なじみのジェニーと結婚式を挙げるとき、ダン小隊長は杖をつきながら現れた。婚約者のスーザンとともに、魔法の脚で歩いていた。


ダン小隊長は、自分の運命を信じ、自分の生きる道はそれしかないと信じたのだろう。しかし、神様は彼をベトナムで死なせはしなかった。脚を失った彼は絶望した。祖国のために、部下と共に死ななかった自分を許すことができなかったのだ。そして、残されたのは「障害者」になった自分だった。


しかし彼は神様と仲直りした。それは、自分自身と仲直りすることだったのだろう。彼は、ガンプの結婚を祝福し、自分もまた愛する人と人生を歩む気持ちになることができた。


絶望とは自分自身と一緒に生きていくことができないと感じることである。キルケゴールは、自分が許せない自分自身を、神に許されることで許そうと頑張った。しかし、彼は自分を許すことができなかった。良い悪いの話をしているのではない。私は、私自身と生きていく。私は自分が好きである。ろくでなしだけど、私には私しかないから。この問いの答えはみんな自分で見つけるのだ。神様の贈り物を生かして。人生はチョコレートの箱、開けてみるまで中身は分からない。そうして、今日も私は生きている。

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