第8話 サビア・ロッサの抗争2


 アレックスが拐われた……しかも私の目の前でだ。

 私は彼を救えたかもしれない……私は体中の震えが止まらなかった。


 そして、ジェイ達は仲間同士でかなり、もめている様子だった。

 

「おいジェイ!

 今、ここで乗り込んだら、もう後には引けない!

 本格的にサビア・べレノーザと構える事になるぞ!」


「こっちは昨日も奴等とかまえてるんだ。

 それに今回はアレックスが捕まってるんだぞ!

 一刻も早く行かねぇと、あいつらは何をするかわからん!

 アレックスは俺たちの家族であり俺の弟も同然だ!

 俺は行く!俺一人でもな!」


「相手はサビア・べレノーザだぞ!

 お前が行った所で殺されるぞ!」


「悪い予感がするんだ! 

 今、行かねえともう二度とあいつに会えないかも知れない」


 そうだ……いつでも、いる事が当然だと思っていた人達が、この先もずっといるとは限らないのだ。

 お母さん……美桜(みお)……お父さん……

 私はある日突然異世界に来て、もしかしたら……もう会えないかも知れない。

 自分や周りの全てのものは常に変化し続け永遠なんてものは存在しないのだと。

 だから今出来る事をして、今大切な人を絶対に離してはいけない。


「ジェイ私は行くわ。

 アレックスは私の目の前でさらわれた……私の責任よ」


「レオナ……」


 その時、別のメンバー達も割って入った。


「ジェイが行くと決めたなら

 俺も行く。

 俺は最初からジェイに命を預けている」


「俺もだ……俺達もギャング始めた時から

 長いものに巻かれる気なんて更々ねぇ。

 アレックスは俺等の家族だ!

 サビア・べレノーザの奴らにかましてやろうぜ!」


「分かったよ……ジェイ。

 暴れてやろうぜ!」


◇◇



 私達は20人を引き連れてサビア・べレノーザのメンバーがよくいるらしい店に向かった。

 そこではベレノーザのメンバーらしき3人がカードゲームの様な遊びをしていた。


「よう……御機嫌そうだな」


「お……お前はジェイ!」



≪ゴン!!!!≫



 ジェイは先頭にいた男が間合いに入った瞬間、右の拳でアッパーを打った。

 殴られた男は体は全く動かなかったが、下からかち上げられた顎はそのまま天井を向き、首の骨がへし折られた。


「あっあ……助けてくれ!」


≪メキ!!!!≫


 すぐさま隣にいた男のこめかみにジェイの左フックが突き刺さり、頭が陥没しそのまま真下に崩れ落ちた。


「流石はジェイだな……相変わらず人間とは思えねえ」


 ジェイのメンバーですらその一瞬の出来事に冷や汗を流していた。

 私はというと理解が追い付かずに完全に固まっていた。 

 

 そして完全に腰が抜けて床に崩れ落ちていた残った一人にジェイがしゃがんで話しかけた。


「選択肢はねぇ。

 答えろ。アレックスはどこだ?」


 男はベレノーザのメンバーで名前をアロンソというらしい。

 アロンソはジェイの仲間に脇を抱えられながらアレックスが捕まっている場所を案内させられた。

 

◇◇


 そこはサビア・ロッサの東の端ぐらいに位置するベレノーザが所有する建物だった。


「ここだ……もういいだろう?

 俺は命だけでも助けてくれ」


「駄目だ。

 アレックスを確認してからだ。

 お前も中について来い」


 ジェイは男に鍵を開けさせ私達は建物の中に入った。

 私達は警戒をしながら奥へと進んだ。


「ここだ」


 男がドアを開けると私たちは大きな部屋に出た。

 部屋は薄暗く奥に人影が見えた。


≪バタン!!!≫


 私たちが振り返るとドアが閉められ、奥から男たちの姿が現れた。


「ご苦労だったなアロンソ。

 まさか本当にノコノコ現れるとはな」 


「お前は!」


 その先頭に立っている男は長い銀髪に全身に金アクセサリーとマントの様な毛皮のコートを羽織った大男だった。


「お前が例のジェイか?

 噂は聞いてる。

 俺達サビアべレノーザ相手に随分と

 元気の良い暴れ方してくれてるそうじゃねぇか。

 俺がサビアべレノーザのボス、

 メルヴィン・ドニゼッティだ」


 その時部屋の明かりが一斉につけられ私達は100人近い男達に囲まれていた。


「ジェイ……どうやら完全にハメられたみたいだな」


 しかし、ジェイは迷わず前に向かって歩いた。


「おい、ドニゼッティ。

 アレックスはどこだ?」


「勿論、お前さえ来れば返してやるつもりだ。

 おい、わたしてやれ」


 すると、私達の目の前に何かが投げ込まれた。


 それを見て私は思わず言葉を失った!

 周りのみんなも一瞬で顔が青ざめた。


 背格好や着ている服、全て見覚えがあった……

 それは変わり果てたアレックスの姿だった。

 全身は痣だらけで腕や足はありえない方向に曲がり、顔はグチャグチャに潰されていた。


「アレックス!!」


 ジェイ達は怒りに震えながらドニゼッティを睨み叫んだ。


「大丈夫!今すぐ治療魔術をかけるから!」


 すると、ジェイがゆっくり歩み寄ってアレックスの脈に手を当てた。


「レオナ……無駄だ。

 もう死んでるよ」


「ジェイ!なんで……アレックスは……」


「レオナ。

 俺はどうかしちまったのかな。

 親友の死を目の前にしてなんで……

 こんな冷静でいられるんだろうな……」

 

 ジェイの顔を見ると怒りを通り越し、悲しく恐ろしい表情になりながらドニゼッティの方にゆっくりと歩いて行った。

 その姿を見てドニゼッティは薄ら笑いを浮かべていた。


「おい、ジェイをやった奴には特別ボーナスをやるぞ!」


 それを聞いてベレノーザの一人がジェイに飛び掛かった!


≪!!!!!!≫


 ジェイの拳が数十発体にメリ込み一瞬で相手の男の体は腐った果物の様に変形し壁にめり込んだ!


「次は誰だ?

 最も順番が変わるだけで、

 今日お前らが全員死ぬ事に変わりねぇがな」


 ドニゼッティは少し不機嫌そうに顔をしかめた。


「ふん、ガキが。

 本物のギャング相手にその冗談は笑えねえぜ」

 



           To Be Continued….




:登場人物:


レオナ:

 身長 175センチ

 17歳

 神戸市出身の女子高生。


ジェイ:

 身長 184センチ

17歳

 少年ギャングのリーダー。

 

アレックス:

 身長 172センチ

16歳

 サビア・ベレノーザに殺害された。


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レオナの異世界傭兵記 相良 麦 @airamugi

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