第5話 サビア・ロッサの少年ギャング1



 わたしは今、サビア・ロッサにあるギャングっぽい集団の溜まり場らしきバーにいる。

 とにかくガラが悪い…。

 私も元オタクとはいえ、高校デビューしてからはクラブやバーには入り浸っていた方だ…。

 ちなみに未成年だった事は異世界に来たからもう時効であると主張したい。

 しかし、こんなガチのギャングの溜まり場になんて来た事はない。

 ナイフでダーツしている姿なんてスタ○ーンの映画でしか見た事がない…。

 わたしは危ない系の人達とはしっかり一線は引いてたのだ……。


「おいレオナ!

 飲んでるか!?」


「はい……。

 頂いてます」


「怪我は治癒魔術で治ったんだし

 今夜はバンバン飲んでいいぞ!

 おいアレックス!

 レオナにこないだのラムを

 持ってきてやれ!

 あのラムはマジでぶっ飛ぶぞレオナ!

 なぜなら、

 何が入ってるか分からねえからな!」


 周囲のメンバーが爆笑している……。


 やだ…。何この超体育会系ノリ…。

 

「ははは。

 ジェイのヤツ完全に酔っ払ってるよ。

 レオナさん

 こういう場所は苦手ですか?

 もし酒が駄目なら

 近くに旨いレストランがありますよ」


「大丈夫よアレックス。

 気を使ってくれてありがとう」


 ジェイや周りのメンバーは超オラオラ系だけどアレックスは唯一年下の結構可愛い系だ。

 ああ…。この子には癒やされるわ。


「レオナさんはこの町は

 初めてなんですよね?

 見た目はラディチ大陸人ぽいですが

 もしかして

 他の大陸から来たんですか?」


「そうね。

 知らないと思うけど

 わたしは日本って言う国から来たの」


「ニーホン?

 確かに聞いた事ない国ですね。

 西ラグレスタの方ですかね…。

 しかし何でまたサビア・ロッサに?」


「それが急に光と魔法陣に包まれて

 気がついたら突然、南の荒野にいたの…」


「突然??

 転移魔術か何かですかね…。

 そんな禁忌みたいな魔術を

 使える人間がまだいるんですね…。

 それは大変な目に会いましたね」


「そうなのよ…。

 いきなり荒野に飛ばされたと思ったら

 ドラゴンに襲われたし…。

 死ぬかと思ったわ」


「ドラゴン!?

 もしかして荒野の主に

 ひとりで遭遇したんですか!?

 それで生きて帰ってくるなんて!」


「それが夢中で魔術を連発したら

 運良く諦めてくれたみたいで」


「レオナさん魔道士なんですか!?

 すげぇ!マジて尊敬します!

 何せ、このあたりには詠唱魔術を使える

 人間なんて殆どいないですからね!

 魔術はまず字が読めないといけないし

 何より魔道士からの訓練が

 何年も必要ですしね」


「へぇ。そうなんだ…」


 本で読んだだけで出来たら駄目なのかな?

 わたしはアレックスに宿の場所に案内してもらって今夜はやっとベッドで眠る事ができたのだった。



◆◆



 俺の名前はアレックス。

 ラディチ大陸の紛争地帯で生まれ、すぐに親を失い、この掃き溜めの様なスラム街、サビア・ロッサで孤児となった。

 8歳の時に18歳のギャング3人にからまれていた時にジェイに出会った。

 ジェイは当時まだ9歳だったが18歳のギャング3人を殴り倒した。

 それからジェイと行動をともにする様になりギャングを結成した。

 このサビア・ロッサはワルの巣窟で一人でいる奴はどんなに強くてもたちまちカモにされる。

 俺はジェイに俺達少年だけでギャングを作る様に言った。

 そこから俺達の少年ギャングは勢力を拡大し、この町最大のマフィアであるサビア・ベレノーザにまで一目置かれるギャング集団になったのだった。

 そして、俺は若くして、この町の顔役にまでなったが、その日々は何か空虚であり、殆どケンカに明け暮れるばかりの少年時代を過ごしていた。

 何か虚しさを感じていたかもしれない。

 

 しかし今日、ある人に出会った。

 それは正におれの人生で感じた事のない初めての衝撃だった。


 その女性(ひと)はいつも通りジェイと町を歩いている時に偶然見つけた。

 彼女は建物の窓ガラスを見つめながら髪を触っている様だった。

 その瞬間、俺はまるで時間が止まったかと思える程ショックを受けた。

 それは決して大袈裟ではなく今迄、見た事もない程、美しい女性だった。

 俺は何度も自分自身に彼女に声をかけろと言い聞かせた。

 ただ、彼女のあまりの美しさに足がすくんで動かなかった。


 俺は決して女が苦手な訳ではない。

 むしろこの町では女にはモテる方だ。

 初体験は11歳の時に年上の17歳の女に迫られて終えた。

 

 しかし、レオナさんを見た時には足が全く動かなかった。

 どうしよう…。

 今、声をかけなかったら…、もしかしたらもう二度と会えないかも知れない。

 そうだ…。

 あんな美しい女性に今後、あえる保証なんてない。

 そうこうしていると、サビア・ベレノーザの二人組が彼女を路地裏に連れ込んだ


「やばい!

 よりにもよって

 サビア・ベレノーザかよ!」


 俺は露店で串焼きを注文していたジェイを呼んで助けを求めた。


「おいジェイ!

 今、若い女がまたサビア・ベレノーザの奴らに

 さらわれたぞ!」


「ほう…。

 そいつは耳寄りな情報だ。

 アレックス。

 武器は直ぐ抜けるようにしておけ!」


「任せろ!

 しかし場合によっちゃ

 サビア・ベレノーザと

 構える事になるかもしれないぞ」


「もともと気に入らねぇ連中だ。

 モメるきっかけが欲しかった所だ」


 俺達は直ぐにサビア・ベレノーザの二人組を制圧した。

 しかし、彼女は服が破られ殴られた様子だった。

 俺はこんな時、彼女にどうしたらいいか分からなくて固まっていた。

 その時、ジェイがレオナさんにさっとローブをかけた。

 俺がモタモタしている間にジェイに先を越されてしまった。


 ガキの頃から喧嘩の時でも、町一番の踊り子を口説いた時もいつもジェイには叶わなかった。

 あいつはいつも肝心な所で度胸のある奴だった。

 

 しかし、ここは気持ちを切り替えるべきだ。

 ここからレオナさんに思いを伝えれば良いのだ。

 彼女は今、見ず知らずの場所に飛ばされて誰かの助けを求めている。

 俺が今、彼女を守ってやればいいんだ。

 俺は初めて本当の恋に落ちたのかも知れない。




                To Be Continued…。




:登場人物:


レオナ:

 身長 175センチ

 17歳

 異世界初ベッドで眠れた。


ジェイ:

 身長 184センチ

17歳

 体育会系ギャングらしい。

 

アレックス:

 身長 172センチ

16歳

 レオナに惚れた。



※作中に登場するリッキーリードについての詳細は『リッキーリードの新世界解放叙事詩』をご覧ください。

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