第4話 荒野の町サビア・ロッサ

 

 わたしは案内してもらった夫婦と別れて町に入った。

 町の名前はサビア・ロッサ。

 例の本によると、ここはラディッチ大陸の南端にある治安最悪のスラムと呼ばれる町らしい。


 第一印象から言うと……。

「汚い……」


 日本生まれ日本育ちの私からすると、ちょっとしたカルチャーショックだった。

 問題の治安は考えただけでも不安になりそうだ。

 先入観からか道行く人々の表情もお世辞にもお上品には見えなくなってきた。


 この異世界で初めに辿り着いた町がこれって中々ハードル高くない…?

 それにしても、学校の制服を着ているせいか凄い目立っちゃってるし。

 出来る限りそっとしといてもらいたいアウトローっぽい方々に、さっきから凄くジロジロ見られてる気がする……。


 どれ位の価値になるか良くは知らないけど、今持ってる硬貨が使えれば新しい服を買った方が良いわね。

 出来るだけ目立たない格好をして、早くもっと治安の良い町に北上していきたいわね。

 建物の窓ガラスを見ながら服の事を考えて、気を取られていると背後からいきなり口を押さえつけられて路地裏に引きずり込まれた!

 一瞬、何が起こったのか全く理解できなかったが次の瞬間、2m近い大男に羽交い絞めされている事が分かった。

 隣にはもう一人男がいて男の手には刃渡り30センチはあるナイフが握られていた。

 え!わたし、もしかして襲われてる!?


「おい、動くなよ。

 少しでも動けばお前の喉から首の骨ごとぶった切るぞ」


 日本じゃ聞いた事がないぐらい恐ろしいセリフだ…。

 しかも、叫んで脅すでもなく冷静に淡々と言っている。

 掴んでくる力も人間とは思えない程の力だ。 

 それに、口が塞がれているから魔術の詠唱も出来ないじゃない!


「おい、見ろよ。

 思った通りだ!

 変な格好はしてるが、しゃぶり付きたくなる位の良い女じゃねえか」


「ああ、これはかなりの金になるだろうな」


「その前に、俺達で頂いちまうのも悪くねぇな」


 男はわたしの制服の襟を掴むと、腰まで一気に破り捨てた。

 上半身は裸にされ、下半身はパンツの紐が一本残っている状態になった。

 何て力なの!?

 どうしよ!わたしどうなっちゃうの!?

 


「えらく脆い衣服だな。

 むしろ都合が良くて助かるがな」


 その時、男の手がわたしの口から離れた。

 今だ!


『ファイヤーボー…』


≪ドス!!!!≫


 魔術が発動する前にお腹を殴られた!


「危ねえ!

 こいつ魔道士か?

 しかし、この距離じゃ詠唱してる隙なんて与えねえよ」


 苦しい!

 息が出来ない!


 叫んで助けを呼ぼうにも声すら出ない状態で地面に這いつくばってお腹を押さえ、のたうち回る事しか出来ない状態だった。


「た…たす…け」


 やばい…。

 殺される。


 あれ……。

 来ない?


 顔を上げると、別の男の背中がわたしの前に見えた。


「ジェ…ジェイ。 

 何でお前が!?」


「いやぁよう。

 アレックスがお前らが女を路地に

 連れ込む物騒な姿を見たって言うからよ」


 全く気付かなかったけど、もう一人の男がいて、襲ってきた男の仲間の顔に槍を突き立てていた。


「おいジェイ!

 俺達サビア・ベレノーザにこんな事して

 ただで済むと思ってんのかよ」


「知るかよ、ただ戦争なら望むところだぜ。

 元々お前らみたいな外道に付く気なんて

 俺達は、さらさらねぇんだからよ。

 俺達も悪党だが、お前らはラクダのゲロ以下だぜ。

 全くもってやり方がクールじゃねえな。

 女を抱きたいなら刃物じゃなくて花でも持ってくるんだな」


「気取ってんじゃねえぞ!

 お前らガキのギャング集団が

 大人を敵に回して生きて行けると思うんじゃねえぞ!」


「御託は十分だ。

 今、俺とやる気なら命はねえぞ」


「くそ!行くぞ!」


 わたしを襲った男二人は悪態をつきながら走り去って行った。


「大丈夫か?」


「うん…」


 彼は腰に巻いてあったマントの様な布をわたしの肩から掛けてくれた。


「腹殴られたのか?

 俺はジェイって呼ばれてる。

 あんた名前は?」


「ありがとう。

 私は立花恋桜奈(たちばなれおな)」


「タッチ…バーナ…?レオナ?

 何だ。

 変わった名前だな?

 オーケー。

 レオナよろしくな」


「取り合えずその服を何とかしないとな。

 着替えは持ってるか?」


「いえ。

 これしか持ってない」


「そうか…そいつは大変だな…。

 でも安心しろ。

 俺が良い店に連れてってやる。

 サビア・ロッサで一番流行ってる店があるんだ。

 これも縁だ。

 俺が買ってやるよ」


 私はジェイに肩を借りながら歩いた。

 やだ…。

 何…。

 この人カッコいい。

 顔も超イケメンだし…。


 そして私たちは店に到着して服を買う事になった。


「え…。

 この服……?」


 それは、魔道士と言うより、まるでド〇クエの踊り子の様なスタイルだった。

 ほぼ、ブラとパンツの上から腰にパレオみたいな布を巻いただけの恰好じゃない……。


「お客様、スタイル抜群だからとってもお似合いですよ!」


「こ…これ、外で着るの?」


「最高にクールじゃねえか!

 イケてるぜレオナ!」


 これが異世界…。

 恐るべし……。

 てか何こいつ…。やっぱり嫌い…。

 

 こうして、わたしは露出度全開の異世界ファッションになった。




        To Be Continued…。




:登場人物:


レオナ:

 身長 175センチ

 17歳

 コスチュームチェンジした。


ジェイ:

 身長 184センチ

17歳

 ギャングらしい。

 

アレックス:

 身長 172センチ

16歳

 ジェイの仲間。



※作中に登場するリッキーリードについての詳細は『リッキーリードの新世界解放叙事詩』をご覧ください。

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