第三章『地球を救う方法 LAUGH』
「平行線ですね」
進展がない。というより話が噛み合っていない。
見ているのも飽きてきた。授業すらも適当に済ませて下校する。現在は夕方である。町の様子は普段と何一つ変わらない。カラスが鳴き、駅では満員電車が来る。
小学生が数人騒ぎながら歩いているのを電車の窓から眺めた。
空に浮かび夕日に輝く縦型円盤だけが非日常
もしや、騒いでいるのは政府と自分だけ?
「いやいや……」
そんなまさか。現実として世界の危機があるわけで。
「ほら、テレビだって……」
電気屋の液晶を覗き込む。
そこでは楽しそうに競馬予想をする宇宙人の姿があって頭を抱えなおした。
翌日、テガッサ側から進路変更について条件が提示された。掲示板の提案はこうだ。
『我々テガッサ情報宅配便にとっての代価は輸送物件である情報であり……《中略》……より質の高い情報を公開提供し、その価値が一定量を超えた場合のみ……』
だらだら長い文章が続いていく。なんのことだと思っていると稲穂が言った。
「つまり面白い話をしろってことでしょ」
国連による結論も同じようなもので日本でもNHKで国民に向けて協力が要請された。
『『オドラデク』衝突まであと百二十三時間。それまでにテガッサにとって有益な情報を提供して頂きたい。送り方は……』
情報量はテガッサの用意したメーターが三十万に達するまで。情報価値はテガッサ側が判断する。
発表直後から掲示板は大嵐が吹き荒れた如く。
世界からバカッターやらグロ画像やらTwitter発のアホなジョークが集まり溢れる溢れる。
ここまで大ごとになると部員たち全員がネットに注目した。
「……賞金も出てるぞ、テガッサが判断した価値に応じて国連が支払う形で」「レートは?」
「え~、メーター一で、百ドル」
「マジか…」
「ヨネさんー。今円いくつー?」
「ごめんモンスター厳選してて手が離せない~」
「一ドルで約百十二円です先輩」
「ほー」
「と、いうことは……?」
一瞬、部室が静まり返る。米田稲穂のするゲームのBGMだけがする。そんな中各々の頭の中ではソロバンを弾く音がパチパチパチパチ。
バタタッと音を立てて皆がPCやらスマホを掲示板に繋げだした。それぞれ一攫千金目指してとっておきのネタやら小話を打ち込みだす。
「……────お前ら映画発表会迫ってるぞ」
部長が騒動の中心でぼやいた。
募集開始から三十時間。さっそく大型賞金が出た。獲得者はカナダ、自主製作映画で題名は『激突! ロブスターVSグリズリー』。
「わけわからん……」
「文句言う前にドンドンアップしろほれ速く!」
「……発表会迫ってるぞ」
しかし大型とはいっても獲得は三百ポイント。総スコアを全て足しても二千ポイント。情報の多くは無価値と判断されて放置されているのだ。
「あ、充電切れた。誰か―、スイッチ持ってないー?」
「イナホ先輩……周り見ましょうよ」
さらに日付をまたいで五十時間後、ロシアで大型賞金、プーチンのコラ画像。インドから新手のエクササイズ。
ここまでで一万ポイント。
「かなり善戦してると思うんだけど」
「俺描いたイラスト全部あげてみるわ」
「……発表会」
外に目を向ければ世間は結構騒がしくなっていた。
縦型円盤の付近には大量の屋台が立ち並び観光客が写真を撮る。
「お祭りじゃん」
「んー、なにがー?」
横を見ると稲穂がモンスター厳選に飽きたらしく某電鉄ゲームをやっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます