第二章『地球終了のお知らせ METEOR』

「ドントルックアップ?」

「アルマゲドン?」

「妖星ゴラス?」

「うわ古」

 ざわめく部室。いつのまにかずいぶん部員たちが集まっていた。話す内容はいつもと変わらぬバカ話。

 それらを尻目にPCを眺める環と米田。

「地球終了のお知らせ、ねぇ」

「実感わきませんね」

 二人して頭を掻く。それもそうだろう。世界はいつもと何一つ変わらないのだから。

 各国政府の対応もいまのところ『最大級の警戒』とのこと。実質静観の姿勢である。

 つまるところ、なんの異常もない。平日の朝。

「ま、地球滅亡の裏付けみたいなのも出てきたことだし、そろそろなにかアクションがあるんじゃないかなぁ」

 そう言って稲穂は床にごろりと転がりゲームを始めた。

「実感というか緊張感足りませんよ先輩」


 翌日。ついに国連が動いた。

 厳しい審査を潜り抜け選ばれた国連全権大使がテガッサ星人代表と協議することになった。

 ネット掲示板で。

 会話の模様はユーチューブで生配信である。

「あ、スパチャ投げれるこれ」

「宇宙人が口座持ってるってこと?」

 PCに書きこむ大使の姿が全世界に生中継されている。

 画面は二分割され片方が書きこみ様子、片方が掲示板中継だ。

 この掲示板、まったく規制がされていない(テガッサが設定)ので宣伝や荒らしが横行し、パレードを開いたような様子になっている。

「なにも全人類で宇宙人に恥晒さんでも」

「先輩、人類のほんの一部です」

 さらに地球側の荒らし規制要請をテガッサ星人は頑として聞かず、荒らしや宣伝にいちいち反応し解説を求めるので協議は脱線と迂回を繰り返し少しも続かない。

「……イナホ先輩」

「どうしたの」

「俺地球人でいるのが恥ずかしくなってきました」

「諦めなさい。恥じるなら人類をこういう設定にしたどこぞの神様を恥じなさいな」

 大使が問う。

『そちらが進路をそらしたり出来ませんか?』

 テガッサ代表が答える。

『それができたらやっとるわっ!』

テガッサ側の言動がだんだん崩れてきた。掲示板のみなさんからよくない影響を受けているらしい。

『そもそも情報とは? 何が『オドラデク』に入っているのです?』

『申し訳ありませんが、個人情報につき、顧客のプライバシーに抵触しますのでお教えできません』

『なぜ衝突確定前にこちらに了解を求めなかった?』

『軌道はコンピュータにまかせっきりにしてるんで、こちらの設定ミス。悪い悪い』

『自分でもよくわからないものを動かしているというのですかあなた方は?』

『お前らだってそうじゃん』

『どうにかなりませんか?』

『と、いうよりそっちが軌道を逸らしたまえ。エエス人が放屁でエエスをずらし隕石を回避したとある書籍に書いてある』

『それは、子供向けの創作物です』

『創作? なにかの記録ではないのか?』

『現実的に地球人にはその行為はできません』

『できないことを記録するのかね君たちは! おもしろい! 実におもしろい! 詳しくお聞かせ願いたい!』

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