宇宙社会人あらわる 宇宙社会人《テガッサ星人》登場!
第一章『円盤あらわる UFO』
冬なのにどこか暖かい奇妙な昼下がり。
映像研究部員の
バックからは他の部員たちの雑談が聞こえてくる。アニメだったりなんだりととりとめもない。
空には白い月がまるで風変わりな雲のようにぽっかり浮かんでいる。のん気な風景だ。
────月の横に妙な物が浮かんでいた。
小さな棒だ。色は白っぽい。
その棒が、何処と無く大きくなっている。既に月の直径と同じ。青空で、あの白い棒が巨大化していく。長く、高く、空を貫き、いや、あれは棒などでは無かった。やがて太陽を覆い隠し、周辺が陰って、
「……ひえっ」
盛大にすっころぶ。
天空に、超巨大な白無垢の円盤が縦に浮かんでいた。ラジオが少々の雑音の後、喋りだす。
『こんにちは、『エエス』の皆さん。我々は『テガッサ星雲』からやってきました。続けてまことに失礼ですが今回はエエスの皆さんに立ち退き要求にやってまいりました』
環はすっころんだ姿勢のまま的外れなことを口走る。
「円盤なら、横に寝て来なよ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『謎の円盤の宇宙人より立ち退き要求、国連による対策会議開始』
昨日空に浮かぶ縦円盤を見て朝自宅に届いた新聞の見出しを読んでめまいを催しながら大学に向かう。
「なんのギャグだよ」
大学に着きまず部室に入る。一番乗りかと思えば既に先輩、
「イナホ先輩また泊まりですか」
「違うよぉ。早いだけだよぉ。ま、昨日は皆で遅くまでニュース見ながら盛り上がってたけどね」
先輩の手元のPCからはニュース番組が流れている。
いや、ニュース番組が流れて『いた』。
定期的にTV番組は宇宙人にジャックされており今もPC画面に映るのは宇宙人から『エエス』に対する立ち退き要求と珍妙なCMのようなもの。
『安全、安心、宇宙を駆ける運送屋~。テガッサ、テガッサ、テガッサ運輸~』
軽快でレトロな音楽が流れまくり、ケッタイな人形みたいなものが舞台で踊っている。
「なんでしょうねこれ。どっかのスーパーハッカーの仕業じゃねえんですかね」
「さあねぇ。でも実際に浮いてるしねえ。円盤」
CMが数パターン繰り返された後に国会みたいな場所が映った。
中心に立っているのはさっきの人形のホンモノである。
半月型の目玉が横に飛び出しており、顔はイカの頭を思わせる。真っ黒な背広のような衣服を着ており胸元にはオレンジの発光するプレートがある。
『おはようございます。テガッサ情報宅配便代表です』
『再び申し上げますが、我々は『エエス』への立ち退き要求にやってまいりました。ご拝聴よろしくお願い申し上げます』
『誠に勝手ながらあなた方の情報運輸ツールを一時拝借させていただいております。侵略じゃありませんよ』
最後のセリフにだけは心当たりがある。環がよく利用する某有名掲示板が昨日のうちに宇宙人が用意したと思われる掲示板にジャンプするように書き換えられていた。
「十分侵略してるじゃん君たち」
「先輩それ言っちゃ終わりです」
ちなみにその掲示板での宇宙人との最初の会話は
『タヒれカス』
『そのような言語は我々の用意した言語プログラムには該当がない! 是非意味をお教えいただきたい!』
であった。
「なにそれ古のスラング」
先輩がネットに張り付いた結果、わかった情報はこのようなものである。
まず、『エエス』はearth。地球の読み間違いだ。それらを訂正しながら噛み砕いていくと。まず彼らはテガッサ星人といい、円盤は彼らの住処とのこと。
彼らは宇宙を巡りながら星々の間で『情報』を輸送して生計を立てている種族らしい。
宇宙の地上げ屋サイヤ人と比べればだいぶマシである。
そして彼らの仕事道具である『情報集積体』通称『オドラデク』の軌道が地球の公転軌道とモロかぶり。このまだと衝突する。
なのでテガッサ星人は地球に要求したのだ。
地球をどかしてくれ。と。
「どかせるわけないだろ」
とは地球人の総意である。
NASAが公開した画像は既にTVやネットに出回っている。巨大な赤い惑星のようなもの『オドラデク』が。
大きさは直径約十万三千キロ。構成物質の判別はできないが質量が観測されている。ガス惑星などではない。
表面はマグマのようなもので覆われ赤く赤熱しており、マグマオーシャンと呼ばれたかつての地球を思わせる。
『これが我らの情報集積体『オドラデク』だ。そしてこれが『エエス』と衝突するのだーっ!』
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