夜光電車の怪 共生昆虫『キーラ』登場!
第一章『あけてくれ GHOST TRAIN』
気持ち悪い。寒い。
そう思いながらコートに包まりなおし、硬い寝床で寝返りをうった。
頭の鬱血が少しは和らいだが船の上にいるようなグラグラとした感覚は今も続いている。
『大丈夫ですかー? 起きてますかー?』
奇妙な音楽まで聞こえてくる。
意味の解らない音節、理解できないリズム。眠るときに流れる音楽としては最高だ。しかし。
『もう終電行っちゃいましたよー。朝まで電車来ませんよー』
ダメだ。BGMが出しゃばり始めた。
体をゆすられるのが不快で仕方ない。
ブチ殺すぞ。
『ここ地下鉄ですよー。閉めちゃいますよー。もう一度来て寝てたら連れていきますからねー』
酔っ払いがどうとか言いながら音はフェードアウトしていく。
続けてパチン、パチン、と音が鳴りあたりが暗くなっていった。
連鎖するようにして意識が落ちかけるが、
ガコン、ガコン、ガコガコガコガコ。
突如あたりが明るくなっていった。
重いまぶたを開けると電車がやって来たのが見える。
電車なくなったんじゃないのか?
あの嘘つき野郎。
乗り込もうとふらつきながら立ち上がる。
あれ、入口はどこだ?
窓ばかりで昇降口に当たる部分が見つからない。それにその窓、窓全体がスモークをかけたようにぼやけていて中の様子が不鮮明だ。
すりガラスの地下鉄? そんなんあったっけ?
首をかしげながらよく見ると、人影がちらほらとある。
それなりに空いているようだ。
――――バゴンッ!
突然、窓に人が倒れこんできた。
驚いて尻餅をついてしまう。
髪型からして女性らしい影は倒れこんだ窓を必死にバンバンと叩いている。
ひょっとして助けを求めているのか?
その女性を皮切りに、次々と複数個所から人影が現れ窓を叩いたり大声を出していたりしだした。
『……けて……』
『開けてくれ!』
『降ろし……れ! ここから……』
『誰……こ、……る』
ここで目の前の呆気にとられるヨッパライを残し、地下鉄はゆっくりと縦方向にうねりながら発進し、闇に消えた。その後部には、
蛍のように緑に発光する『柳』がはりついていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます