第83話 それぞれのその後



12月、予定通りにアンと殿下の婚約が正式発表された。

同じタイミングで殿下の即位式も行われ、国王になられた。


「エドワード!

今日の予定は!!??」


「街の孤児院の視察です。

その後執務室にお戻りになり、書類仕事をして頂きます、陛下。」


殿下から陛下に、エドワード様からエドワードに僕たちは呼び方が変わった。


「アンに会う時間は、、、あるかな?」


「もちろんです!!!

休憩を30分取りました。

陛下、アン、私の3人でお茶をする予定です!!!」


「、、、僕とアンの二人きりに変更することは可能かな?」


「不可能です!!!!!」


僕のアンへの想いは揺るぎない。




「本日は王城にて王妃様からの妃教育を受けて頂きます。

陛下、エドワード様が休憩をご一緒したいとのことです。」


朝起きると、すぐにマリエルがその日の予定を教えてくれる。


「わかったわ。

身支度を手伝ってくれる?マリエル!」


「かしこまりました、お嬢様。」


学院を卒業し、妃教育が終われば私はフレデリック様と婚姻し王妃となる。

婚姻に向けての準備が多すぎて、目まぐるしい日々を過ごしている。


「マリエル、お兄様との結婚はいつ頃なの?」


「エドワード様はお忙しいようで、最近はお話すら出来ておりません。

お嬢様がご結婚なされた後なのは確実です。」


、、、後でお兄様に会ったら急かすことになりそうだわ。




「お兄ちゃん!お帰りなさい!」


「オリバー!お疲れ様!」


旦那様が用意してくださった隣国の家へ行くと、妹と母が出迎えてくれた。


「ただいま!母さん、エミリー!」


休暇は家族とこの家で過ごす。


「エミリー、今日はお土産があるんだ!」


「あら?何かしら?」


僕はカバンからチョコレートを取り出す。

缶には鳥の絵が描かれている。


「まあ!嬉しい!

ありがとう!お兄ちゃん!」


子どもの頃、ずっと夢見ていた家族との日々が今現実となった。





数年後、陛下とアンの元には男の子が一人生まれた。


「陛下、殿下の誕生をお祝いしたいという方がいらっしゃっています。

陛下のご友人だった方です。」


「友人だった、、、か、、、。

通してくれ。」


訪ねてきたのはロン様だった。

事件後、釈放されたロン様は自身の父に厳しく躾けられたと聞く。


「陛下、お子様の誕生誠におめでとうございます。

、、、過去の私の過ちをお許し頂けるとは思いません!!!

ただ一言謝罪をさせて頂きたいのです。

本当に申し訳ございませんでした!!!!!」


どうやら心を入れ替えたようだ。


「顔を上げてくれ。

貴方の過去の過ちは到底許される物ではない。

、、、だが、私の妻は心優しい女性なんだ。

貴方が心からの謝罪をしたのなら全てを許してほしいと言われている。

アンに感謝しろよ?ロン。」


陛下がロン様に歩み寄り、手を差し伸べる。

ロン様は涙を流しながらその手を取った。






「女神様?

何をされているのですか?」


「私の子孫たちは元気かな〜って思って!」


生前、力のある魔女だった私は死後女神となった。


「女神様が聖女の証を二人に与えて、大変なことになっていましたからね、、、。」


この護衛は一言多い。


「だから時間を巻き戻したじゃない〜!

全員が幸せとはいかなかったけど、、、。

ごめんね、貴方の命を助けられなくてテオ。」


「私の幸せは旦那様や、奥様、エドワード様、アン様が幸せなことですから、、、。

陛下はどうされたのですか?」


「やっと自由な身分になれた!って世界を飛び回ってるわよ!

私の都合で亡くなったんだから、お詫びとして許可したわ!」


「生前はお忙しい方でしたからね。」


自由を求めて旅回るなんて私の遺伝子を感じるわ!


「これで悪役以外は全員幸せになったわね!

ハッピーエンド!

めでたし、めでたし〜!」


女神は今日も自分の作った王国を見守っている。


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