第82話 好きだよ



「お嬢様とエドワード様が幸せに暮らして頂くことが私の一番の幸せです。」


屋敷の使用人として100点満点の回答が返って来た。


「僕の幸せはアンが幸せであること、、、後は、、、。」


次の言葉がなかなか口に出せない。


「エドワード様?」


マリエルが不思議そうに、心配そうにこちらを見ている。


もし、もし僕がここで何も言わなかったら?

あの時は僕のことを好きだと言ってくれたが、もう二度と自分からは言ってくれないだろう。

そしたら、、、彼女は王城の誰かと結婚するかもしれない、故郷の誰かと結婚するかもしれない、屋敷の者と結婚する可能性だってある。

マリエルが、、、他の誰かと?


「、、、君と一緒にいることだ。

君がそばに居てくれることが僕の幸せだ。」


マリエルの顔が見れず、手元の紅茶を見る。

どんな顔をしているのだろう。

何を思っているのだろう。


沈黙が続く、気まずい。

僕は意を決して顔を上げた。


「マリエル!!??」


彼女は泣いていた。


「ごめん!!!!!

嫌だった!!??」


身を乗り出し、マリエルにハンカチを渡す。


「ありがとうございます、エドワード様。」


受け取って涙を拭いてくれた。


「エドワード様は身分の差や私の気持ちなど、ごちゃごちゃと余計なことをお考えになっていたでしょう?

一緒に居たいとは絶対に仰って下さらないと思っておりました。」


当たり!!!!!

さすがマリエル!!!!!


「エドワード様よりもお嬢様が大切ですが、良いのですか?」


「僕と一緒にアンを大切に思ってくれてるマリエルが好きだよ。」


「失礼なことばかり言いますよ?」


「僕のダメなところはどんどん指摘して、直していってほしい。」


「あと、、、。」


まだ何か言いかけているマリエルの口元に手を当て、言葉を遮る。

椅子から立ち上がり、座っているマリエルよりも低い目線になるように片膝をつく。


「そのままの君が好きだ。

ずっと一緒に居て欲しい。

僕と結婚して頂けますか?」


「、、、はい!」


返事を聞くとマリエルを抱きしめた。


「よくやった!!!!!エドワード!!!」


「お兄様!!!素敵です!!!」


「さすが私の息子だわ!!!」


テラスから一番近い部屋の窓から、両親とアンが飛び出した。


「エドワード様、マリエル!おめでとう!」


「幸せにして頂くのよ!」


壁の後ろ、二階の部屋の窓、庭の芝生の中から使用人たちも飛び出す。

オリバー、メイドたち、コックたち、屋敷の者が全員居た。


「、、、どこから見ていたの?」


「最初からだが?」


父の言葉にその場から逃げ出したいほど恥ずかしくなった。


「旦那様、、、奥様、、、エドワード様のお相手は私でもよろしいのでしょうか、、、。」


僕と結婚するということは、未来の伯爵夫人になるということ。

本来なら貴族の娘と結婚するのが普通だ。


「息子が選んだ人なら、望んだ人なら誰だって良いと思っていた。

それがマリエルのような素敵な女性だったんだ、こんなに嬉しいことはないよ。

知っての通り馬鹿な息子だ、たくさん迷惑を掛けることになると思う。

マリエル、息子のことをよろしく頼む。」


「貴女が私の娘になるなんて、どんなに嬉しいか!!!

マリエル、エドワードを選んでくれて本当にありがとう。

息子のことよろしくお願いしますね。」


マリエルの目からたくさんの涙がこぼれ落ちた。


「旦那様、奥様、ありがとうございます!!!!!」


屋敷中に拍手と、歓声が響き渡った。

マリエルは両親公認の僕の婚約者となった。



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