第68話 安らかに



「マリエル!!!」


叫びながら部屋に入ると、ベッドに寝たまま目を閉じる彼女が居た。

フラフラと近づき、手を取る。

僕の手よりも冷たいが、まだ温もりを感じる。


「行かないでくれ、、、。

僕を置いて行かないで、、、。」


握りしめたマリエルの手に僕の涙が落ちる。


「エドワード、、、。」


いつの間にか僕の背後に立っていた父が、僕の肩に手をかける。

慰めてくれようとしているのだろう。


「父さん、、、んっ!!??」


そのままマリエルから引き剥がされた。

すごい力だ。


「このバカ息子!!!

目が覚めたと言っても、万全じゃ無いんだ!!!

静かにしてやれ!!!」


「えっ、、、?」


彼女の顔を見ると、目は開き、僕を見て微笑んでいた。


「エドワード様、おはようございます。」


聞き取るのがやっとの小さな声で挨拶をしてくれた。


「よかった、、、。

よかった!!!マリエル!!!

君まで居なくなってしまったら、僕はどう生きていけばいいのか、、、。」


ベッドのそばに跪き、ワンワン泣く僕の頭にマリエルが手を乗せる。


「エドワード様、、、。

本当にうるさいですし、鬱陶しいので退室して頂けますか?」


「、、、ごめんなさい。」


頭を撫でる手は優しかったが、言葉が痛かった。





次の日、テオの葬儀が行われた。

この国の司祭は不在だが、隣国から仮の司祭が派遣されていて葬儀を取り仕切ってくれた。

殿下も参加してくださった。


白い百合に囲まれ、穏やかな顔で眠るテオ。

少しの留守番を残して、屋敷の者はほとんど全員が参加した。

テオは天涯孤独の身だったが、僕らは彼を家族だと思っている。


「テオ、本当にありがとう。

大好きだよ。」


「テオ、息子と娘を守ってくれたこと心から感謝するわ。

ありがとう。」


「私とお兄様を守ってくれて、本当にありがとう。

大好きよ。」


「お疲れ様、安らかに眠ってくれ。」


僕たち家族が声を掛けた後、棺は閉められた。

そのまま葬列でテオを送る。


埋葬式では屋敷の者が皆涙していて、テオがどれだけ愛されていたのか実感した。




屋敷に戻ると、殿下からお話があると応接室へと呼ばれた。

父と共に向かった。



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