第67話 永遠の別れ



朝早く、オリバーに起こされた。

まだ朝日が登ったばかりの頃だ。


「先程、テオが亡くなりました。」


血の気が引いていくとはこのことだろう。

寒さを感じ、頭が真っ白になる。

オリバーを押し除け、テオの部屋へと走って向かう。


「テオ!!!テオ!!!」


部屋に入るとすでに父や母、アン、屋敷の者が数人集まっていた。

父は俯き、アンと母は涙を流している。


「テオ、、、。」


テオが寝ているベッドまで向い、大きくゴツゴツとした手を握る。

氷の様に冷たかった。

瞼を閉じた顔の色は真っ白だった。


「教会に行ってくる。

葬儀のことを話さなければ。

明日、通夜を行う。

屋敷の者は全員参加するように。

オリバー、手配の相談がしたい、部屋へ。」


「はい、ご主人様。」


オリバーと父が退室した。

チラッと見た父の目が赤かった。


「エドワード様、お着替えを。」


テオの手を握り、顔を見ているとオリバーに声をかけられた。

父との話が終わった様だ。

僕はどのくらいここに居たのだろう。


「わかった。」


テオの部屋を後にした。




「エドワード様、大丈夫ですか?」


昼になっても上の空の僕に、オリバーが心配して声をかける。


「心配を掛けてごめん。

紅茶を淹れてくれる?」


「かしこまりました。」


紅茶を飲んで落ち着けるとは思えないが、何かしていないと心が壊れそうだ。

僕が生まれる前から屋敷の護衛として勤めていたテオ。

口数の少なさに怖がったこともあったが、幼い僕らとたくさん遊んでくれた。

僕と、アンを守るため、助けるために力を尽くしてくれた。

そのせいで亡くなってしまった。


「僕がもっとしっかりしていたら、剣術に長けていたら、テオは生きていたのかもしれない。」


ネガティブな言葉が出てしまう。


「テオの仕事は護衛です。

立派に勤めを果たし、エドワード様とお嬢様を守りました。

彼に後悔は無いと思います。

お二人をお守り出来たこと、誇りに思っているのではないでしょうか。」


オリバーは優しい。

僕が罪悪感を感じない様に言葉を選んでくれている。


「ありがとう、オリバー。」


紅茶を飲もうとすると、部屋がノックされた。

ドアが開くと、メイドが息を切らせて立っていた。


「エドワード様!!!

マリエルが!!!」


その名を聞いた瞬間、僕は部屋を飛び出していた。



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