第53話 プロポーズ



城の最上階は教会になっている。

結婚式や、礼拝を行う場所だ。

オルガンや、ステンドグラスが綺麗で僕の大好きな場所だ。


「アン、ここに居られるかい?

教会なら祈れば女神が助けて下さるかもしれない。」


アンを外に出すことは出来なかった。

僕は絶対にケビン助祭を倒してここにアンを迎えに来ようと思った。


「私も!!!!!

私も共に行きます!!!!!」


「ダメだ!!!!!

君は聖女だよ?

君が意識を失ったら王国の加護は外れる。

今以上の惨劇が起きる!!!!!」


ああ、そういえばあの日婚約破棄をしたのもここだった。

あのステンドグラスが割れ、竜が城を破壊したのだ。

巻き戻った日からここにはほとんど近づいていなかった。


「アン、いい子だから僕とお父上を信じてここに居ておくれ?」


泣いているアンの頭を撫でていると、背後で扉の開く音がした。




「こちらにいらっしゃったのですね!

殿下、聖女様!」


ケビン先生だった。


「探しましたよ?

かくれんぼがお上手なんですね!」


口元はニコニコ笑っているが、目は笑っていない。

少しずつ僕らに近づいてくる。


「ケビン先生!!!!!

どうしてこんなことをなさるのですか!!??」


僕の言葉に先生が笑い出す。


「どうしてって?

この王国を私の物にするためですよ?

この国のため若い頃から尽くしてきたのに、、、。

この国はアダムス司祭を選んだ!!!!!

あんな奴が司祭?

ただの親の七光りのくせに!!!!!」


ケビン先生の顔から笑顔が消えた。


「国王ならば司祭選びに口を出すことも出来ますよね?

私の方が相応しいとわかっていたのに、陛下は何もしなかった!!!!!

あいつを選んだ!!!!!

こんな国など滅んでしまえばいい、私が新たな国王となる!!!!!」


言っていることがめちゃくちゃだ。


「それは逆恨みでしょう!!!!!

悪いのはアダムス司祭と、その父である前司祭では?」


「お前に何がわかる!!!!!

あとはお前さえ居なくなれば全部上手くいくんだよ!!!!!

あの馬鹿が教会で騒ぎを起こしてくれて助かったよ!!!!!

手薄な王城に入るのは簡単だった!!!!!」


先生がこちらに一歩近づき、片膝をつく。

左手を胸に当て、右手を広げてこちらに伸ばす。

僕はアンを自分の後ろに隠す。


「聖女様!!!!!

殿下が居なくなった暁には、私と結婚致しましょう?

代々聖女は王家に嫁ぐのです。

逆を言えば、あなたと結婚すれば私は王になれるということ!!!!!

さあ、こちらへ!!!!!」


ケビン先生はアンにプロポーズをした。


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