第52話 発見



「殿下〜!聖女様〜!

どちらにいらっしゃるんですか〜?

お話ししましょうよ〜!」


ケビン先生が叫んでいる。

時々爆発音が聞こえるので、王城を破壊しながら進んでいるのだろう。

声も音もどんどん近くなる。


「大丈夫だよ、アン。」


アンは怯えているようで、僕に抱きつく力が強くなっていた。

ああ、こんな状況でなければどんなに幸せなことか。


「聖女様〜!

ドレスの端がクローゼットから出ていますよ?」


突然クローゼットの前から声がした。

ケビン先生だ。

一か八か飛び出してアンだけも逃す!!!





「俺の娘には指一本触れさせはしない!!!!!」


僕が飛び出すと、目にしたのはケビン先生に向かって剣を振り上げるフェイン伯爵だった。


「伯爵!!!」


「お父様!!!」


ケビン先生は伯爵が振り下ろした剣をギリギリで避ける。


「伯爵、こんにちは。

いきなり攻撃するだなんて酷いですよ?

私は殿下と聖女様とお話がしたいだけなのに、、、。」


わざとらしく悲しげな顔をするが、不気味だった。


「殿下、アンを連れてお逃げください。」


「それは出来ません!!!

僕も共に戦わせてください!!!」


アンの父である伯爵を一人置いて行くことなど出来ない。


「殿下!!!!!

私と殿下が共に倒れれば誰が娘を守れるのですか!!??

あなたはいずれ国王になられるお方、ここで倒れてはなりません!!!!!」


そうだ。

先程ロンに甘いと言われたばかりじゃないか。


「アンを安全なところに避難させたら必ず戻ります。

しばしご辛抱ください!!!!!」


アンの手を取り、再び走り出した。

父の身を案じ、叫んでいたアンを無理やり連れて行った。



一階に降り、城の外へアンを逃がそうと思っていた。


「なんだ、、、これは!!??」


ケビン助祭が放ったのだろうか、一階は火の海だった。

騎士たちは逃げられただろうか、、、。


「アン、ひとまず上へ行こう。

なんとかして君を外に出すから、そしたらすぐ僕は伯爵の元へと向かう。」


「私もお父様の元へ連れて行ってください!!!!!」


涙ながらにそう言うアン。

僕はアンの願いを初めて無視した。


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