第51話 逃亡



「殿下?

どちらにいらっしゃるのですか?

今後のお話を致しましょう?」


ケビン先生の声が廊下に響いている。


「殿下、、、。」


「大丈夫だよ、アン。」


僕とアンはクローゼットの中へと隠れていた。




王城へ着くとすぐに異変に気づいた。

静かすぎて不気味で、火薬の臭いが充満していたのだ。


「城の様子がおかしい。

僕は中を見てくるから、アンは隠れていて。」


一人で帰すことも出来ず、アンには隠れていてもらうことにした。


「殿下!!!

私も連れて行ってください。

いざとなれば、きっとお役に立ちます。

見捨てて頂いても構いません!」


アンは僕のそばを離れようとしなかった。


「アン、君に何かあったら僕は生きていけない。

いい子だから言うことを聞いておくれ。」


何度頼んでもアンは僕から離れなかった。


「わかったよ、、、。

僕のそばを絶対に離れないと誓える?」


「誓いますわ!」


こうして僕はアンと共に城へと入った。

地下道の出口は城の裏手にあるので、裏口から入ることにした。




「どうした!!??」


裏口から入るとすぐに騎士が一人倒れていた。

ボロボロだ。


「ケビン助祭が、、、爆発物を持ち込んでいます、、、。

陛下と王妃様が、、、。」


「わかった。

僕に任せてここで休んでいてくれ。」


助祭が来たのなら謁見の間に通しただろう。

僕とアンは謁見の間へと向かった。

途中の部屋でアンには隠れていてもらおうと思っていた。

階段を上がり、二階へと進む。


「おや?

殿下!こんにちは!」


長い廊下の向こうからケビン先生に声を掛けられた。


「お話し致しましょう?」


こちらにどんどん近づいてくる。

手には瓶が握られていた。


「アン!!!

こっちへ!!!」


僕はアンの手を掴み、必死に走った。

後ろを少し見ると、ケビン先生が追いかけてきている。

アンを連れて王城の外まで逃げられるだろうか?

アンはドレスを着ているし、外まで走る体力は無いだろう。

アンを抱えて走って逃げ切る自信もない。

瓶を投げられて届く距離まで追い付かれたら終わりだ。


「アン、ここへ!」


途中にあった部屋へ入り、クローゼットの中に隠れた。

窓はあるが飛び降りるのは危険すぎる。


「アン、狭いけど我慢しておくれ。

少しの間だけ静かにできるね?」


僕の言葉にアンが頷いてくれた。


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