第49話 父の嘘


「マリエル!!!マリエル!!!」


医者の治療中、意識のないマリエルに僕はずっと声を掛け続けた。


「エドワード様、足の治療を先になさって下さい!!!」


オリバーが僕の足を心配している。


「僕の足はどうだっていい!!!

マリエルを!!!」


聞き入れない僕の肩をオリバーが両手で思いっきり掴む。


「エド!!!

マリエルが起きた時にお前の足を見たら、どう思う?

エドが自分よりもマリエルを優先していたことを知ったらどう思う?

俺たちは主人と家族が大切なんだよ!!!

エドがマリエルを思うように、マリエルもエドが大切なんだ!!

わかるだろ!!!??」


まだ執事と坊ちゃんになる前の、友人だった頃の話し方で僕を叱責してくれた。


「ごめん、オリバー。

僕は冷静になるべきだった。」


「私こそ、申し訳ございません。

坊ちゃんに失礼な言葉使いをしたこと、お許しください。」


二人で微笑み合い、僕は足の治療を受けた。




テオの容体を見るため、一度マリエルのそばを離れた。

テオが休んでいる部屋へと向かう。


「すぐに王城へ向かう!!!

屋敷のことは任せたよ、マイラ。」


父の部屋で父と母が話しているのが聞こえた。


「あなた、どうかお気をつけて、、、。

屋敷のことは私にお任せ下さい!!!

ご無事を祈っております。」


「必ず無事に帰ってくる、アンと共に!!!」


その言葉に僕の体は勝手に動いていた。

部屋のドアをノックもなく勢いよく開ける。


「アンに何かあったの!!!??」


父と母が驚いている。

父が僕の顔を見て近づいて、頭に手をポンっと置いた。


「ただアンを迎えに行くだけだ。

怪我をしているお前を連れて行くことは出来ないから、屋敷で待っているように。」


父の表情でアンに何かあったのだとわかった。

僕に嘘を吐いているのだとわかった。


「わかりました。」


だから僕も嘘を吐いた。




父が出発してからすぐ、僕は馬に乗った。

剣術は苦手だが、乗馬は得意な方だ。


「アン、今行くよ。」


僕は王城に向かって走り出した。


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