第44話 君は聖女


マリエルを抱えながら、地下道を走る。

前にはアンが走っている。

ドレスで走りにくそうだ。


「教会と王城は地下道で繋がっているのです。

昔、殿下に教えて頂きました。

このまま王城へと走りましょう!!!」


さすがはアン、こんな時でも冷静に状況を判断していたのだ。


「どこに行った!!!!

クソガキ!!!小娘!!!」


地下道に入ってから数分後、司祭の叫び声が聞こえてきた。

テオは倒されてしまったのだろうか、、、。


「急ぎましょう!!!

お兄様!!!」


「ああ!!!

あっ、、、、!!!!??」


所々明かりはあるが、暗い地下道。

人を一人抱えている状態で上手く走れず、僕は転倒してしまった。

どうにかマリエルを庇うことはできた。


「大丈夫ですか!!!!

お兄様、マリエル!!!」


先を急いでいたアンが駆け寄ってくる。


「痛っ、、、。」


マリエルを庇って受け身を取れず、僕は足を捻っていた。


「アン、先に行け!!!!

王城に行き、助けを呼んで来るんだ!!!」


「そんな!!!

お兄様とマリエルを置いてなど行けません!!!」


司祭の足音がどんどん近づいてくる。

少しずつ、だが着実に。


「アンは聖女だろう!!!??

未来の王妃だろう!!??

こんなところで立ち止まっちゃダメだ!!!

アンが居なくなったらこの国はお終いだよ!!!

君はこの国の未来そのものだ!!!

君がここで倒れちゃダメなんだ!!!」


初めてアンに怒鳴った。

生まれてからずっと大切に大切にしてきた妹、誰よりも愛する妹。

そんな妹が僕の言葉に涙を流す。


「ごめんなさい、お兄様、、、。

すぐに殿下にお伝えして、助けを呼んできます!!!

どうかご無事でいてくださいませ、、、。」


アンが再び王城へ向け走り出した。

どうか、どうか無事に殿下と、、、。




司祭の足音が先ほどよりも近づいてくる。

僕は護身用のナイフを構えた。

アンを守るため、最近父に持たされた物だ。

僕だけならもう少し遠くへ逃げることも出来るが、ここにはマリエルが居る。

抱えて走ることはできないが、彼女を一人置いていくことも出来なかった。


「、、、何をしてるんですか?

お嬢様を追いかけてお守りして下さい。

そして少しでも遠くにお逃げ下さい。」


「マリエル、、、?」


足元を見ると、寝かせていたマリエルが目を覚ましていた。



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