第45話 伝えたいこと



「君を置いていけるわけがないだろう?

意識が戻ったのなら、君こそ少しまで遠くへ逃げてくれ!!!」


視線は司祭が来るだろう方向から外せない。

真っ直ぐ前を見たまま反論する。

足が痛い。


「使用人が屋敷の坊ちゃんを置いて逃げる?

そんなことはありえません。

ナイフを貸してください。

刺し違えてでもやつに致命傷を与えます!」


少しだけ視線を向けると、マリエルがフラフラとしながら立ちあがろうとしている。

僕は彼女を無視した。


「何をしているんですかシスコン!!!

今こそ愛する妹であるお嬢様をお守りする時でしょう?

私なんて置いてお嬢様を追いかけてください!!!」


マリエルの声の中、司祭の足音が聞こえてくる。

テオと戦い、ダメージを追ったのか足音は速くはない。


「僕がマリエルを置いてアンを追いかけたらどうなる?

マリエルが傷ついたらどうなる?

僕は絶対にアンに嫌われる!!!

それに、、、好きな女性を置いて逃げるほど弱い男なつもりはないよ?」


「え、、、?

それは、、、こんなところで言うことだったでしょうか?」


マリエルの反応を見たい!!!

でも見られない!!!

僕の顔はどうなっているだろう?

顔に今まで感じたことのないほどの熱を感じる。


「今言わないといけないと思ったんだよ!!!

ここで言っておかないと、後悔するかもしれないだろう!!!」


叫んで誤魔化す。

すると、拍手の音が聞こえてきた。

アダムス司祭だ。


「それは正解ですね〜!

他にも遺言があれば今伝えてほうが賢い選択ですよ?

いや〜青春だ!!!」


ついに司祭が僕らに追いついた。

ニタニタとしながら一歩、また一歩と僕らのほうに歩みを進めてくる。


「心配は無用です、司祭。

この続きは今晩にでも話します。

彼女の返事もその時に聞こうと思っています。」


ナイフを構えて司祭と対峙する。

一応護身術は学んでいるが、得意ではない。

目が慣れて司祭の姿が見える。

腕と、足から血が流れている、テオが斬りつけたのだろう。


「フェイン家の護衛は優秀ですね?

おかげで私は満身創痍ですよ、、、。

ただなあ!お前だけは許さねえ!!!

お前と、お前の父親だけは俺の手でぶっ殺してやるよ!!!!」


口調が変わった司祭が襲いかかってくる。

司祭がブンブン振り回す短剣をなんとか避ける。

避けるのが精一杯だ。

手負いだが、体格の良い司祭は僕の上から短剣を振り下ろしてくる。

足の痛みがどんどん増して行く。

それでもここから、マリエルの前から離れるわけにはいかない。


「くそっ!!!!」


「エドワード様、お逃げください!!!」


苦戦している僕を見てマリエルが司祭に飛び付き、そのまま二人が倒れ込む。

マリエルから逃れようと司祭がバタバタともがいている。



「何しやがる!!!この女あああ!!!」


「マリエル!!!やめろ!!!離れろ!!!」


助けなきゃ!!!

痛む足を引きずって司祭とマリエルに近づく。


「うっ、、、。」




僕が二人を引き剥がそうとした瞬間、、、司祭がマリエルの背中を刺した。



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