第37話 父の推理
「エドワード様、トリックは見破れそうでしょうか?」
帰りの馬車で殿下と僕はエミリーの奇跡について話し合っていた。
殿下の横にはエミリーが育てた花の花束が置かれている。
「申し訳ありません。
トリックはわかりませんでした。
3歳くらいの男の子が熱のある演技をあんなに上手く出来るとは思えませんし、本当に熱を下げたようにしか見えませんでした。」
「僕もです。
あの場面を見るのは二度目ですが、本当に奇跡が起きてるようにしか見えなかった、、、。」
僕も殿下もエミリーが起こした奇跡のトリックはわからなかった。
あの場で証拠を抑えられなかったのが悔しい。
「今日のことを父に伝えます。
何かわかるかもしれません。」
「よろしくお願いします。」
何も解決しないまま、僕と殿下はそれぞれの帰路についた。
「エミリーは本当に聖女で、奇跡を起こせるのでしょうか?」
今日の出来事を全て父に伝え、相談する。
「水はアダムス司祭が持ってきたんだよな?
司祭が細工をした可能性はないか?」
「透明で水にしか見えませんでしたが、何か溶け込んでいる可能性もありますね。
細工されていたのかもしれません。」
さすが父だ。
見ていない場面でも冷静に考えてくれる。
「即効性のある解熱剤でも飲ませたのだろう。
それに、その親子も怪しいな。」
「親子ですか?
息子の熱は演技には見えなかったし、母親も涙を流して心配していましたが、、、。」
あの姿が演技だとしたら息子は子役になれる。
「殿下が教会に来る日にたまたま熱を出した子どもを運び込まれるか?
タイミングが良すぎる。」
ちょっと疑いすぎな気がしてきた。
「明日教会のある街へ行こう。
聞き込み調査だ。
その親子にも話を聞きたい。」
「承知しました。」
「お前は顔を見られているし、身分は隠した方が聞き込みはしやすい。
オリバーに服を借りておけ、平民として向かうぞ。」
父は噴水の時のように今回も自分の手足、目と耳で調べたいらしい。
服を借りようとオリバーを探して屋敷を歩く。
見つけた時、オリバーはマリエルと話していた。
「オリバーの前では笑うのか、、、。」
オリバーとマリエルは笑い合いながら話していた。
美男美女が並ぶとお似合いだ。
マリエルは150センチ前半くらいの身長で小柄で可愛らしい。
オリバーは180センチ近い長身で二人で並ぶと身長差がだいぶある。
女性は長身な男性が好きだと聞く、マリエルはオリバーに惹かれているのかもしれない。
「オリバー!
明日父と出かける用事がある、服を貸してもらえないだろうか。」
二人の邪魔になるかもしれないと思ったが、服を借りるのは明日だ。
今、言うしかなかった。
「エドワード様、承知致しました。
すぐにお部屋にお届けします。」
「そうしてくれると助かるよ、ありがとう。」
僕は足早に二人の元を去った。
二人が仲良くしている姿を見ているのが嫌だった。
オリバーに劣等感を感じた。
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