第38話 親子との出会い



次の日、教会のある街へと父と共に向かった。


「昨日の親子を探したいが、どこに住んでいるかはわかるか?」


「教会の近くに住んでいて、母親は針仕事をしていると言っていました。

男の子はレオと呼ばれていました。」


店を経営しているわけでもないだろうし、この情報だけで探すのは難しいように思えた。


「わかった。」


父は近くを歩いていた初老の男性に声を掛けた。

男性はボロボロの服を着ていた。


「こんにちは!

私はルーカス・ディラン・フォードと申します。

この街で仕立て屋を経営しようと思っていましてお針子を探しています。

針仕事の出来る女性を知りませんか?

知人からはレオという少年の母が腕が良いと聞いているのですが、、、。

申し訳ない、彼女の名前をど忘れしてしまったのです。」


即興で偽名と嘘の経歴をスラスラ話し始めた父が恐ろしい。

さすが一人で貿易の仕事を大成功させ、伯爵家を繁栄させた男、、、。

この人を跡を継ぐ自信がなくなってくる。


「ジュリアのことか?

彼の息子はレオといって3歳の男の子だが、、、。」


「ジュリア!

その方で間違いないと思います!

スカウトに行きたいのですが、どちらにお住まいでしょうか?」


男性から親子の住む場所を聞き出すことに成功した。


「お前もこれくらいは出来る様になれよ?

すぐにペラペラと話せると得することが多いんだよ。」


父は悪役のような微笑みを浮かべていた。




「あそこか?」


教えられた家に近づくと、親子が出てきた。

レオは元気になっていた。


「身なりが綺麗になっている、、、。」


教会に来た時はボロボロだった二人の服装が綺麗になっている。

貴族が着ている服ほどではないが、良い物に見えた。


「ちょっとカマを掛けてみようか。」


そう言うと父は親子に話しかけた。


「こんにちは。

殿下からの命を受け、お話を伺いに来ました。

殿下はあなたのしたことに気づいています。

本当のことを話して頂ければ、見逃して下さるそうですが、、、。

お話しして頂けますか?」


「、、、何のことでしょうか?

私には心当たりがありません。」


母親は明らかに動揺しているが、口では何もなかったと否定してた。

男の子は見知らぬ僕たちに警戒し、母親のスカートの裾をギュッと握っている。


「そうですか、、、。

ではお話頂けなかったと殿下にはお伝えしておきますね。

すぐに王城から迎えが来ると思います。

息子さんは施設に、、、。」


「やめて!!!!!

話すわ!!!話すから、息子には何もしないで!!??」


父の言葉を遮るように母親が叫ぶ。

息子を抱きしめ、離れないようにしている。


「お話頂ければ、悪いようにはしません。」


その言葉に少し落ち着きを取り戻したようだ。

ふうっと、一つ息を吐いた。


「狭いところですが、入ってください。

中でお話します、、、。」


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