第20話 パーティー開催!!!



「お兄様と共にパーティーに参加出来るなんて、とても嬉しいです!」


そう言って女神が微笑んでくれるだけで、僕の心は晴れ渡る。

アンの隣に座るマリエルからの痛い視線が狭い馬車の中で直撃しているが、気にしないことにする。


「アン、今日のドレスも素敵だね。」


今日は深海の様な深い青のドレスに身を包んでいる。

アンは本当に何色でも似合う。


「ありがとうございます、お兄様。

マリエルが選んでくれたのですよ。

ね?マリエル?」


アンに微笑まれたマリエルが微笑み返す。

とても可愛らしいが、僕には一生向けられることのない笑顔だ。



「アン!エドワード様!」


王城へ着くとすぐに殿下が出迎えてくれる。

愛しい婚約者に一刻も早く会いたいからだと言っていた。


「エリック様、本日はご招待頂きありがとうございます。」


アンが挨拶をする。

以前は殿下と呼んでいたが、本人が名前で呼んでほしいと希望したそうだ。


「アンはこの部屋で待機してもらえるかい?

馬車での移動で疲れただろう?

パーティーまで少し休むと良いよ。

エドワード様にはフェイン伯爵にお伝え頂きたいことがあるので、別室へ。」


今日のことを話し合うのだなと思った。


「承知致しました。

マリエル、アンを頼むよ。」


アンのことはマリエルに託すことにする。

彼女なら何があってもアンを守るだろう。



「今夜のパーティーにエミリーが参加します。」


別室へ通されるとすぐに、殿下から告げられた。

正直予想通りだった。


「教会から王城へと申し出があったのです。

エミリーは聖女候補なのだから、今後は貴族との交流の場を持つべきだ、と。

本物の聖女がエミリーであった場合、殿下の婚約者は彼女になるのだから、と。」


「それは、、、断れませんね。」


エミリーに聖女の痣がある以上、彼女は聖女候補なのだ。


「どちらが本物の聖女なのか早々に確かめようとしているのですが、初めてのケースで事例がなく、方法がわからないのです。

エミリーに力がないのをわかっているのか、教会も協力的な姿勢は見せないのです。

彼らとしては自分たちに都合の良いエミリーを王妃にして、政治に関わるつもりなのです。」


アンには毎日祈りを捧げさせ、エミリーを王妃に仕立て上げようとしている。

妹の一番の敵は教会かもしれない。


「今夜も何か仕掛けてくる可能性が高そうですね。

予定通り僕がエミリーを見張り、監視、対策を致します。

殿下はアンをお願いします。」


「アンのことは僕が守ります。

エドワード様もお気をつけてください。」


僕と殿下はがっしり握手をしてお互いの健闘を祈った。



今日の陛下の即位10周年を祝うパーティーだ。

と言っても国内の貴族だけを呼ぶ小規模な物で、後日パレードと国外の方々を呼ぶ盛大な物が行われる予定だ。

父も招待されていたが、貿易相手の国のパーティーに招待されて欠席している。

陛下から自国よりも他国を優先するように伝えられたそうだ。


殿下とアンは共に行動し、挨拶周りをしているようだ。

正式な婚約発表はまだ先だが、こういった場で殿下の未来の王妃はアンであると貴族たちに知らせてる。


「殿下、アン様!こんばんは!」


殿下とアンの元にピンクのフリフリのドレスを着た、金髪の女が近づいていく。

アンよりも背が低く、幼い顔をしている。

その低い身長が可愛いと思っているのだろう、ヒールが低めだ。

こんばんは!なんて失礼な挨拶をかます女に周りの貴族の眉間に皺が寄る。


「アン様良いな〜!私も殿下にエスコートして頂きたいですう!」


“あの未来“で彼女は言葉を発していなかったので、こんな話し方とは知らなかった。

体をくねらせ、上目遣いで殿下に話しかける彼女に本気でイラッとする。


「機会があればね。」


殿下が心底嫌そうな顔で答える。


「やったあ!!!

エミリー嬉しいですう!!!

あ、、、なんかごめんなさい?アン様?」


アンが苦笑いをしている。

僕の麗しの女神に喧嘩売ってんのかあの女は。


「では、僕とアンはまだ挨拶が済んでいない方がいらっしゃるので失礼するよ。」


殿下がアンを連れてその場を離れた。

エミリーが拳をギュッと握るのが見えた。

自分が選ばれなかったことが悔しいのだろう。


フェイン家を代表して参加しているので、僕も挨拶をして回った。

エミリーへの監視、警戒は怠らない。



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