第19話 殿下への報告



学園で学期末試験が行われていたり、公務が入ったりしていたので殿下に会えたのは2回目の会合から2週間が経ってからだった。


「なるほど、、、パイプから細工をした可能性が高いですね。」


調査結果を聞くと、殿下も納得している様子だった。


「ただ、彼女は噴水の前に居たので証拠としては弱いかと思われます。

学園内に協力者がいる可能性が高いですが、学園生活の中で怪しい人物に心当たりはございますか?

学園内でなければ教会関係者が怪しいと思うのですが。」


学園の内部については実際に生活されている殿下に聞くのが早いだろう、と父は判断したようだ。


「エミリー嬢と特別親しくしている生徒はいないように思えます。

時間があれば僕を追いかけているので、、、。

クラスは別なのですが、ロンが同じクラスなので話を聞いてみようと思います。」


パーティーに参加するために友人が欲しいという口実を使いたくて、わざと作っていないのでは?と勘ぐってしまう。

狡猾な彼女ならやりかねない。


「その後、殿下は妹と共に行動しているのですか?」


「はい、なるべくアンのそばを離れないようにしています。

エミリーがそばにいることも減りましたが、やはり一筋縄ではいきませんね。

教員が呼んでいたとか、友人が呼んでいたとか、何かと理由をつけて僕とアンを引き離そうとします。」


殿下の顔が暗くなる。


「ロン様の苦言は効果なしでしたか?」


「一度ロンがエミリーの態度は無礼に当たると叱責してくれたのですが、教員に自分の都合の良いように話したようです。

ロンが教員から注意を受けました。

彼女には二度と関わりたくないと言っていて、同じ手は使えなさそうです。

アンに嫌な思いをさせてしまって申し訳ない日々です、、、。」


ロン様の叱責でも態度を改めず、教員を味方につけるとは、、、。

今後も思いやられそうだ。


「殿下、もう1つご報告があります。

動物と心を通わせていたのにもどうやらカラクリがありそうなのです。」


「そうなのか!!!??エドワード!!!」


父にもまだ報告していなかったことなので、驚いていた。


「学園内の管理をしている方達に話を伺ったところ、6月の中旬頃に学園内で犬を飼っていた形跡があったそうです。

更に、鳥の餌の減りが異常に早かったとも聞いています。

拾った犬を学生が飼っていたとか、鳥が多く集まったんだろうと考え学園側には報告をしていないそうです。」


僕の報告に殿下と父が考え事を始める。


「エミリーが学園内で犬を飼い、手名づけたということか?

王城には協力者が侵入していて、犬を放った?

または彼女本人か?

鳥が彼女に集まったのも餌を持っていたから?」


「そう考えると辻褄が合いそうですね。

猫はまたたびなんかを使えば自分の元に誘導することも可能ではないでしょうか?

エドワード、よく調べてくれたな。」


父からの褒め言葉に少し照れてしまう。


「僕からもお礼を言わせてください。

ありがとうございます、エドワード様。」


殿下の美しい顔で微笑まれると、ドキッとしてしまう。


「しかし殿下、エドワードの話が本当であっても今回も証拠がありません。

学園で犬を飼っていたのも、鳥の餌の件も言い逃れをすることが可能です。」


そうなのだ。

またも証拠がないのだ。


「証拠が無ければ彼女には何も言うことが出来ませんね。

こちらが彼女を怪しんで調査していることがバレれば今後更に巧妙に動く可能性が高い、、、。」


殿下も同じ考えだったようだ。


「2週間後王城で開かれるパーティーに彼女が出席する可能性はあるのでしょうか?」


僕は危惧していたことを殿下に尋ねる。

彼女がパーティーに参加し、同じ事件が起こればアンは心に深い傷を負うだろう。


「僕から招待することはありませんが、彼女がどんな手を使ってくるか読めません。

他の貴族に取り入り、潜入してくる可能性も否めません。

出入り禁止にすることも可能ですが、噂好きの貴族たちにアンに不名誉な噂にされることだけが心配です。」


二人の仲に嫉妬したアンが殿下に頼んでエミリーを出入り禁止にした、などという噂が立ちかねない。


「では殿下、私の息子をパーティーに出席させてください。

前回のようにエミリー嬢が泣いて会場を出ましたら、この息子が追いかけます。

エミリー嬢の監視、対策をします。

な?エドワード?」


「、、、、へ??????」


思わずおかしな声が出てしまった。


「フェイン伯爵様!それは名案ですね!

エドワード様がいらっしゃれば僕も心強いです!

ぜひよろしくお願い致します!」


「これで殿下からの直々のご招待となった。

断れないことはわかっているな?エドワード?」


ニコニコしている殿下と、ニヤニヤしている父の前で僕は何も抵抗することができない。


こうして僕は王城のパーティーへと参加し、エミリー嬢と対面することが(かなり強引に)決定してしまった。



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