第18話 疑惑の奇跡



「エドワード、これを見てみろ。」


掘り返された跡があったという場所をもう一度掘り返してみると、パイプが出てきた。

パイプには穴を開けたような形跡があった。


「ここから泥なんかの水に色がつく物を入れれば、噴水の色を変えられそうだな。

エミリー嬢が噴水に手を入れようとしたら元に戻せば浄化されたように見える。

ここなら生垣が影になってるし、噴水に注目している人の目には入らないだろう。」


エミリーが水を浄化したのは奇跡ではなかったのだ。


「もう1つわかったことがある。

エミリー嬢は噴水に手を入れて浄化する振りをしていたのなら、ここに他の人物が居たことになる。

教会の者か、または学園内の誰かだな。」


「エミリー嬢以外にも注意しなければいけない人物が居そうですね。」


しかし!細工がわかったのなら、もう何も心配することはない!!!!!


「これでエミリー嬢の嘘が暴かれましたね!

早速殿下に報告し、彼女を虚偽の申告で国外に追放すれば安心です!」


妹がこれ以上辛い日々を送らなくて済むことが嬉しかった。


「いや、これだけでは無理だろう。

この細工がエミリー嬢の浄化の際に使われたという証拠がない。

水は浄化され、浄化槽も掃除されていた。

どこにも証拠が残っていない。」


父の言葉に一気にどん底に突き落とされた気持ちになった。


「じゃあどうしたら、、、。」


困り果てる僕を父が慰める。


「大丈夫だ、動物と心を通わせた件についても調べてみよう。

そちらもきっと細工がある。

エミリー嬢を聖女にしようとしている教会についても少し調べたほうが良さそうだな。

こうなってくるとエミリー嬢に発現した聖女の証の痣も怪しくなってきたな。」


父の声で大丈夫だと言われると、本当に大丈夫な気がしてしまうから不思議だ。


「さて、帰って王将へと手紙を出そう。

殿下の都合がつく日にお会いして、今日のことを全て報告しておきたい。」


巻き戻りに関わることは全て口頭で伝えるという約束を交わしている。

文面だと誰かに見られる可能性があるからだ。


「そうですね。」


僕らが立ち去ろうとすると、先程芝生の掘り返された跡を教えてくれた男性が近寄ってきた。


「ちょっと!困りますよ!

ここさっき手入れしたばかりなんですよ?

先程伯爵様とお聞きしましたがね?

いくら伯爵様と、その御子息様でもわしらの仕事の邪魔をされちゃ困ります!!!」


僕ら二人はガッツリ叱られた。

そして僕は芝生を戻す手伝いをさせられた。

父は何かと理由をつけ、屋敷へと帰った。

良いんだ、どんな辛いことがあっても!!!

愛するアンのためならば!!!


「伯爵家の御子息様、芝生を元に戻して頂いてありがとうございました。」


作業が終わると丁寧にお礼を言ってくれた。

先ほどまで父と僕を叱りつけていた人とは思えないほど穏やかだった。


「いえ、元はと言えば僕らが芝生を掘り返してしまったのが原因なので!

申し訳ないことをしました。

また学園内で変わったことがあれば教えて頂けると助かります!」


「変わったことか〜。

そういえば!!!学園内で誰かがこっそり犬を飼っていたような跡があったと仲間から聞きましたよ。

あと鳥の巣箱の餌の減りが異様に早い時期もありましたなあ。」


犬?鳥?動物!!!!!!


「そのお話し、詳しく聞かせて頂けませんか!!!!??」


僕の圧に若干引きながらも、仲間を集めて詳しい話を聞かせてくれたこの人に心から感謝した。



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