第6話 婚約者との再会



「お兄様、体調は大丈夫ですか?

屋敷でお休みになれたほうが良いのでは?」


朝からずっと僕を心配してくれるアンは本当に聖女に相応しい。

愛する人のため、愛する人の瞳と同じ深い緑色のドレスを着ている。

悔しいが、似合う。


「大丈夫だよ、アン。

ほら王城が見えてきたよ。」


父と僕とアンは王城へと馬車で向かう。

後続の馬車にはアンの侍女であるマリエル、護衛のテオが乗っている。

テオは他の国の元騎士で、僕より10歳年上の頼れる護衛だ。

マリエルはアンの2つ上で、彼女が誰よりも信頼を置いている。


白く美しい王城。

一番高い塔の上には、この国の国旗が風に揺らいでいる。

昨日竜に壊されたはずの王城は、いつもと変わらず国民を見守っている。

馬車に気づいた騎士がすぐに門を開けた。

我が家の馬車、御者を把握しているようだ。


3人で馬車から降りると、人が駆け寄ってくるのが見えた。

彼が進むたびに美しい金髪が揺れる。


「アン!!!!」


その人は妹の名前を呼ぶと抱きしめた。

正直イラッとした。


「フレデリック様!!!??

どうされたのですか?」


抱きしめられたアンが驚いている。

急なことだったし、彼はここ数ヶ月自分に見向きもせず、エミリーに夢中だったからだ。


「アン、、、本当に申し訳ない。

君を裏切ったこと、信じることが出来なかったこと、僕の今までを許して欲しい。」


殿下の目には涙が浮かんでいる。


「殿下、、、。

私は大丈夫です。殿下の婚約者ですから。」


優しく微笑み、殿下を包み込むアンは聖女を超えて女神だ。

しばらくしてアンから離れた殿下の視界に、僕と父が入った。


「フェイン公爵!!!!エドワード様!!!

お二人もご無事だったのですね!!!

本当に良かった、、、、。」


殿下の言葉に全てを理解した。

巻き戻っているのは父と僕だけじゃない。

殿下も“あの日“を体験している。


「殿下、少しお話しをさせてください。

アン、お前はマリエルとテオと共に別室に居させてもらいなさい。

よろしいですよね?ね?殿下?」


父がいつもの倍くらい迫力のある顔で殿下と話している。

こんなに怖い父は見たことがない。


「もちろんです、、、。

アン、すぐに城の者にお茶と菓子を用意させるから中庭で待っていてくれるかい?」


エミリーが現れる前のような優しい殿下だ。


「はい、お待ちしております。

マリエル、テオ、行きましょうか。」


アンは中庭に向い、僕たちは応接室へと通された。


これからのことを思うと本当に頭が痛くなってきた。




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