第3話 信じ難い事実



「アン!!!よかった!!!」


父は最愛の娘の無事を心から喜び、僕の時と同じようにアンを抱きしめた。

体格差でアンは包み込まれてしまった。


「お父様!!??」


アンは驚きながらも、白く細い手を父の背に回している。

そのまましばらく父の背中を撫でていたが、急に声を上げる。


「こんなことしてる場合じゃないわ!!!お父様、お兄様、早く身支度を整えてください!!!!今日は王城へ行く日でしょう?」


王城へ行く日は昨日で、昨日出向いたからあんなことになったのだが、、、。

アンは何を言っているのだろう。

ポカンとしてる父と僕を見て、アンは呆れている様子だった。


「今日は私と殿下の婚約発表をする会の打ち合わせに行くのでしょう?しっかりして下さい!!!私も身支度に戻りますね。」


そう言ってアンはメイドと共に自室へと戻っていた。

オリバーは朝食の用意を確認するため食堂へ行き、部屋には父子二人だけになった。


「婚約発表は昨日で、そこで殿下からの婚約破棄を伝えられたんだよな?そうだよな?」


最初に言葉を発したのは父だった。

しばらく状況が飲み込めず、二人で固まっていた。


「そうです。婚約破棄をされ、新しい婚約者を見たショックからアンが倒れ、加護が外れ竜が来たのです。」


「そうだよな!!!!それが昨日だよな!!??」


父と僕にはハッキリと昨日の記憶がある。

アンはショックで全てを忘れてしまったのか?

考えても考えてもわからず、また二人で固まっているとドアが開いた。


「旦那様、エドワード様、朝食の準備が整いました。身支度をお手伝い致します。」


食堂の確認を終え、オリバーが戻ってきた。


「オリバー!!!今日の日付は?何月何日なんだ!!!!」


僕が顔の前で大きな声を出すと、オリバーは少しだけ眉間に皺を寄せた。


「寝ぼけていらっしゃるんですか?本日は6月25日ですよ。」



6月25日?

昨日は12月25日だったのに?

僕は半年間も寝ていたのか?

竜の炎にやられた手当をしていたのか?

体を見ても、火傷の痕はない。

全身の火傷が半年間で綺麗に治るか?

オリバーが冗談を言った?父の前で?



「時間が戻ってる、、、、???」


考えごとをしていた僕の横で、父が窓の外を見てそうつぶやいた。


僕も急いで窓の外を見る。

自室の窓からは見えなかったが、外には緑の葉が風で揺れていた。

少し背の伸びた向日葵、コートを着ていない庭師が目に入る。

庭師のジョージは秋に70歳を迎え、この屋敷を辞めて故郷へと隠居した。

しかし、向日葵に水をやっているのはどう見てもジョージだった。



僕と父の時間は半年前に巻き戻っていた。



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