【66】 闇属性魔法

 まずい……どんどん距離を詰められている。

 しかも、円陣となって囲まれているので逃げ道もない。


「カイト、詠唱はまだ掛かりますよ」


 だめか。ミーティアの『ダークコメット』は、闇属性魔法の中でも最強に位置するもの。破壊的な威力が故に詠唱時間がとにかく無駄むだに長い。発動には相応の時間を要する。そもそも街ごと吹っ飛ぶので、なるべく使わせたくない。



「……カイトォ! これで詰めだなァ! さあ、まだ間に合うぞ。糞を食え」

「食うかボケ!! もういっぺん、てめぇに食わせてやるよ、バオ」


 俺がそう言い返すと、バオはひたいの血管をブチブチさせ、



「カイトてめええええええ!! もう殺す。絶対に殺す!! 女共は全員、裸に剥いてやっちまえ!! そこの美しいメイドは俺様が奴隷どれいにしてやらあああァ!」



 挑発したはいいが、これは返って危険だったか。

 いや、少しでも詠唱の時間を稼げたらと思ったのだが、間に合わなかった……。これで本当に終わりだ――。



「カイト様……」

「ルナ…………すまな――――」




『………………ぉぉぉぉぉ!!!』




「――――ん? なんだ、遠くから声が?」



『ぉぉぉぉぉォォォオォォォオォオ!!!』



 声はどんどん大きくなり、やがて――、




『『『『『ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!』』』』』




 シャロウのメンバー『30人』を取り囲むようにして、大勢の人間が現れた。……こ、これは、まさか『シャロウ』の全員が集結したのか!?



 ――――いや、違う!!!

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