【62】 多勢に無勢

 街の中央へ向かうと、そこが俺たちの店……だった・・・



「…………クソ」



 やられた。

 俺たちの店『イルミネイト』は炎上していた。ぼうぼうと燃え盛り、ばちばちとがしていた。もはや原型げんけいはない。一体、だれがこんなひどいことを。



「カイト!」


 ソレイユがあせり叫ぶ。すると――、


 一気に囲まれてしまった。


「なっ……なんだ!?」


 ざっと『30人』はいるだろうか。

 しかも、どいつもこいつも見覚えのある顔ばかり。つまり……



「シャロウ」


「そうとも! お前の帰りを待ちわびたぞ、カイト!!」



「バオ、お前の仕業しわざか!!」

「ああ……この前の恨みを晴らしにきた。いや、それだけじゃない。俺様たちの専用ダンジョン『シュタイン』へ勝手に侵入しんにゅうし、らしたな。この罪は重い……ギルドマスターと副マスター様が黙っちゃいないぞ」


 めが甘かった。

 さっきの門番の二人も混じっているし、バオに吹き込んで復讐ふくしゅうに来たか。


「で、俺の店を放火したわけか」

「そうとも。だが……これだけでは足りん。お前を生きたまま捕らえ、マスターの前に差し出す。その瞬間に処刑する。それでチャラだ」


「……コイツ」


 こっちはたったの四人・・

 多勢たぜい無勢ぶぜい。戦うにしても圧倒的に不利ふりだ。



 ――だけど、



「カイト様……わたしは、何があろうとも最後まであなた様と共に」

「ああ、ルナ。俺も気持ちは一緒だ」



 ……あきらめない。俺は絶対にあきらめない。

 これ以上、うばわせてなるものか――!

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