【05】 月の少女

 目を覚ますと、古びた部屋に横たわっていた。

 半身を起こし周囲を見渡す。ベッドもボロボロ。どこかの小屋か?


「うわっ、俺、ハダカ!?」


 なにも身に着けていなかった。

 どこかに着るものは……?


「目を覚まされたのですね」

「って、キミ!!」


 俺を助けてくれた、あのメイド服の女の子だ。

 改めて見ると……なんだか変わった服だな。まるでゴスロリをリスペクトしたような、そんな個性の強い服だった。オーダーメイドだろうな。


 しかしそれ以上に、サラサラのロングヘアが月のように輝いていた。そこに羞花閉月しゅうかへいげつの顔立ち、それと最高峰のルビーのような『赤い瞳』もまた心を奪われるようだった。


 そんな婉容えんようである彼女は、料理を作っていたみたいだ。空腹をより促進する良い匂いがする。


「服は泥にまみれていましたので……勝手ながら、脱がしてお洗濯しておきました」

「ぬ、ぬが!? ……うそ」


 まさかこの美人が俺を脱がした……?

 俺の視線に気づいたのか、少女は頬を赤らめた。


 やっぱり!


「……そ、その、ちゃんとは見ていないのでご安心下さい」

「そ、そか。でも助けてくれてありがとう。……ところで、キミの名前は?」


「自己紹介がまだでしたね。わたしは『ルナ』と申します。あなた様のお名前は?」


「俺は……カイト」

「カイト様」


 まるで自分に言い聞かせるように一言つぶやく。そんな風に俺の名を口にするルナはどこか儚げだった――。

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