【06】 Lv.999

 ルナはちょっと変わった女の子だった。

 まず、こんなどうしようもない俺を拾い、助けてくれた。


 その次に、俺のスキルを理解しているようで、自身のレベルを売りたいと申し出てきた。それは、彼女にとってなんのメリットもないはずだが。


「ルナ、レベルいくつなの?」

「わたしは、転生を利用していないので『Lv.999』です」


「通常カンストか」


 普通の冒険者は『Lv.999』まで。転生クエストを利用すると最大『Lv.9999』となる。ただし、転生には果てしないほどの膨大な経験値が必要。


 しかも『Lv.1000』以降になった場合『Lv.100』毎に転生クエストを行う仕組み。それこそ大手ギルドに所属しないと、とてもじゃないが転生を繰り返すなんて不可能だ。だから、ルナのような冒険者は『Lv.999』で止まってしまうのが現状だ。


「あの、わたしのレベルを全て・・売ります」


 俺は、金を困らないほどには持っていた。

 あのクソギルド『シャロウ』にはナイショで、レベル売買の商売をしていたからだ。おかげで今では隠し資産だけはそこそこあった。


「……それで、その金でどうしたいの?」

「はい、カイト様とお店を出したいなと。レベル売買のお店を」

「え…………お店を?」


 それを考えた事は一度もなかった。

 今までは自ら冒険者に話しかけたり、ギルドのコネを使っていた。行商で十分だったからな。


 でも、なるほど。お店を出せばもっともっともうかるかもしれない。やってみる価値はあるだろう。

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