第6話

なんとか19時に身体を起こし、準備をして駅に向かう。

心のもやもやがまだ消化しきれていないことを、胃が訴えてくる。心なしか頭も痛い。彼女は随分と悪酔いさせる。

駅に近づくにつれて電車の車輪が轟く。この辺は人身事故だとか物騒なことも多い。電車が止まるとホームに苛立っているサラリーマンが不満垂れては怒号を飛ばす。きっと、あの娘はそんな不穏な空気を切って歩き、1人その中、凛とした立ち姿で参考書を読んでいるのだろう。

とりあえず、この前ほどではないが多少お金も持ってきた。もう少しまともな封筒も、このためだけに準備した。


20時半、駅をふらふら歩いて周りを見渡しても彼女はいない。もう少し待つか。

21時、この前歩いたところは軽く見たがいない。

22時、今日は諦めるか、彼女もそんな頻繁にはここに来ないのかもしれないし、もっと裕福なサラリーマンが多い駅に行ってしまったか。

そんなことを考えていると、3人の男たちが誰かを囲んで怒鳴っている。煩い、面倒なことになっているなぁ、と声の方に視線を向ける。

彼女だ、黒髪が乱れて服も隠すべきとこは隠れている程度。下着の肩紐がずり落ちている。

素直に、怖かった。でも、彼女はもっと怖いだろう。男たちが彼女から少し目を逸らした、それからは早かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る