おまけ - KANADE -

その日は仕事が終わった後に待ち合わせをして右星あきらの誕生日会を創作フレンチの店で開催した。


右星に聞くと居酒屋でいいよと平気で言うので、私が行ってみたい場所を独断で選んだ。基本的に右星はそういうところに拘りがなくて、たまには雰囲気も重視して欲しいと思ってはいる。


ほろ酔いで手を繋いで家に帰るなり、このまましようと右星からのリクエストが出る。せめてシャワーをと言ってみたものの、右星は聞く気はなく、誕生日だから多めにみるかと右星の招きに応じて玄関からまっすぐベッドに向かった。


「この前彩葉いろはちゃんにもらったのをつけた?」


「……一応つけたけど」


我ながらというか、この展開はもう右星の行動パターンからすると読めていて、朝からそれを身に纏っていた。


「やったぁ。楓奈かなでってランジェリーショップには全然一緒に行ってくれないんだもん」


「変態を一緒に連れて行けるわけないでしょ」


「えーっ、楓奈の可愛いさをより引き立たせるためのアイテムを選びたいだけなのに」


「そういうのを変態って言うの」


絶対にその店だけは右星を連れて行かないとわたしは決めている。


「変態でもいいもん」


拗ねながらも右星は手を出すことはやめず、わたしを引き寄せる。


「今日はできる範囲でなら右星のして欲しいことするけど、限度があるからね」


「そんな底なしの変態みたいな目で見ないでよ。わたしはエッチが好きなだけで、わりとノーマルな嗜好だよ?」


そうかなぁと疑う私に右星は抱きついて、そのまま一緒にベッドの上に押し倒される。


「楓奈はそれとももっと刺激的なことしたい?」


「それって逆に刺激ないと満足できなくなりそうで、ちょっと嫌かな。たまにはいいかもしれないけど」


「だよね。そこまでしたら流石に楓奈がつき合ってくれなくなる気がする」


「そういうのにつき合える人を探してください」


「わたしは楓奈がいいからだめ」


覗き込んだ右星の唇が私の唇に触れる。


柔らかい右星の唇は、暗闇でキスをされても今は右星のものだと分かる自信がある。手入れをそれほどまめにしているわけじゃないのにいつも潤いがあって、よく乾燥を感じてしまう私としては羨ましく思っている。


初めは大抵載せるだけの浅いキスを楽しんで、まずは欲望を呼び覚ましてから、右星は更に深くに踏み入ってくる。その頃には私も抵抗なんてゼロで、右星からされることは全面的に受け入れる体勢になっていた。


唇を離した右星は、私の上着を押しあげて今度は腹部に唇をつける。食んで、吸い付かれると少しくすぐったくて、身を捩った。


それでも右星はやめる気はなくて、好き勝手私の肌を弄ぶ。右星が上手いなと感じるのは、私の反応に合わせて手や唇の運びを変えていくところで、毎日セックスしたいと言う割りには性急さがそこまでない。


ほとんど右星がリードしてしまうので、ちょっとは悔しさがあったけど、気持ち良くされることに慣れてしまえば、水と一緒で楽な方に流されるのは自然の摂理だろう。


相阪さんにもらったブラジャーに触れた右星は、ブラジャー越しに私の胸を揉みながら、その間に唇をつける。


「楓奈の汗の匂いがする」


「へん、たい……」


苦し紛れに言ってみるものの、こうなったら右星が止まらないことも知っている。


右星の慣れた手で背中のホックが外されてブラが弛むと、付け根の方から右星の手が入り込んできて、私の胸を直接揉み始める。


結局胸が触れれば右星は何でもいいのではないかとは思うものの、上機嫌で私の胸を愉しむ右星はご機嫌で、ちょっと可愛いのでされるがままに身を任せる。


つきあうまではここまでべったりになると思っていなかった。でも、体で愛していることを示すという言葉を今まで右星は違えてはいない。


「右星にも触らせて」


いいよ、と答えた右星は私から手を離して、一気に自らの上着を脱いで上半身裸の状態になる。


抱き合ったままベッドに寝転がって、キスをし合いながら互いの肌も感じあって熱を高め合う。


「楓奈、大好き」


つきあい始めてほんの少し右星とのセックスは変わった。それがこうして想いを伝え合い、確かめあう時間だった。


単に快楽を求めるだけではなく、キスを重ね合って、呼吸も唾液も混ぜ合わせて心を近づけ合う。


そんな抱き方をしてくれるから、右星とのセックスは心地よくて、癖になって、止められないのだろうと感じていた。


何度も何度も夢中で求め合って、力尽きても体を離せずに右星の腕に抱かれたまま私は微睡みの中で右星のぬくもりを感じていた。


「右星……」


「なに?」


「来年も一緒に右星の誕生日過ごそうね」


「楓奈可愛い。もちろん、これからずっと楓奈に祝ってもらうつもりだから安心して」


頷いた私の瞼に右星のキスが載せられる。


「楓奈と一緒にこの日を過ごせたことがわたしは何より嬉しいよ。こんなに大事な存在を見つけられて、一緒にいられて幸せだから」


「右星、私も……」


互いの境界を溶かし合って一つになる。それはいつもと同じことであっても、私にとって何より大事な時間だった。


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恋路はこの話で終わりとなります。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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