第5話 確認しないと落ち着かない - AKIRA -
玄関の鍵が開く音に反応して、わたしは即座に玄関に向かう。昨日の夜に大丈夫だと確認したのに、一人になるとやっぱり不安は増して、仕事から帰宅してからずっと膝を抱えて
22時前にこれから帰ると楓奈から連絡があって、もう解散したらしいことは知れたけど、楓奈の顔を見るまでは安心できなかった。
「ただいま」
玄関で靴を脱いだばかりの存在に抱きついてキスをして、そのまま楓奈の全身をチェックする。
外見からは酒の匂いが多少するだけでそこまでおかしい部分はなくて、それでももっとしっかり確認したくてその場で楓奈を床に押し倒した。
「
「いやだ。シャワー浴びたら浮気の跡消えるから」
「何でそれ前提なのかな。じゃあいいよ。チェックして」
大の字になった楓奈はもう勝手にしてモードだ。
「怒ってる?」
「可愛いなって思ってる。何もなかったって言葉だけじゃ不安なら確認したらいいよ」
楓奈を見下ろしながらも視線を合わせられずにいると、楓奈に引き寄せられてキスをされる。
滅多に自分からは行動してくれないけど、時々楓奈から不意打ちされるとそれだけで溶けてしまいそうになる。
「淋しかった?」
「うん」
素直に頷きを返して、そのまま楓奈に甘えるようにのし掛かって唇を奪う。
仕事が終わる時間が違うのは常で、それには慣れていたとしても、仕事が終わるのを待つのと、恋人が自分ではない存在と飲んで帰って来るのを待つでは淋しさの次元が違う。
おまけに相手は初恋の叶わなかった恋の相手なのだ。楓奈を信じてないわけではないにしても、どうしたって不安はあった。
唇を吸うと吸い返してくれて、それはいつもの楓奈だった。わたしが強請ると楓奈は大抵のことには応じてくれる。
「ごめんね。右星が好きなだけ触っていいよ」
楓奈がそう言うのは裏切るような行為がなかったことを示しているに等しいことだろう。でも、わたしは触れずにはいられなくて楓奈の服を解いて行く。
上着から脱がせて、ブラも外して楓奈の肌に記憶にない跡がないことを確かめる。
楓奈の白い肌に跡は残っていたけど、自分の癖みたいなのがあって、昨晩自分がつけたものだと区別はついた。
更に珍しくパンツ姿の楓奈のそれも下ろして、敏感な場所も確かめる。
「濡れてる……」
ショーツの中に手を入れ、そこが濡れていることにわたしは衝撃を受ける。何もなかったとしても、楓奈は性的な欲求を覚えた証拠だった。
「あのねぇ、右星が触りまくってたら普通そうなるでしょ。帰って来て早々襲ったのは右星だよ?」
呆れた声の楓奈に、ごめんと謝りを口にする。
全く冷静な判断ができていない自覚はあった。
「責任取ってよ」
「わたしが?」
「人を裸にして、感じさせておいて、放置はないんじゃない?」
「うん。ベッドに行こう。続きしよう」
こういう自分がバカなことをしても許してくれる楓奈が堪らなく好きで愛おしかった。
「右星」
楓奈の手を引いて、起こそうとしたわたしを楓奈が見つめてきて、動きを止めた。
「ちゃんと恋人がいるって言ったから、心配しなくていいよ」
「ほんとに?」
「女性だとは流石に言ってないけど、大事な人だとは言ってあるから」
「楓奈大好き」
嬉しさのあまり起き上がろうとしていた楓奈に飛びつく。
「もうっ」
勢いがつきすぎて楓奈は後頭部を床にぶつけてしまってちょっと怒られたけど、笑い合ってまたキスをした。
心配なんかする必要はなかった、そうは思っていても心配しないではいられないのがわたしで、それを受け止めてくれるのが楓奈だった。
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