初恋のあなたへ

如月二十一

初恋のあなたへ

 今日、恋人と別れた。

 

 18歳で、まだ人生はこれからだ。長い人生の中で、あの人ではない誰かに恋心を抱くときもあるだろう。

 しかし、今の18歳の私にとって、あの人は唯一でただ独りの、心から好きだと思える人だったのだ。

 

 価値観の相違、危機感の差。

 

 世の中の恋人同士が別れる典型的な例としてはこれだろう。そして、私達ももれなく典型例であった。

 

 まぁ、結局そんなものなんだろう。

 

 別れを切り出され、一週間の間を持たせ。そうして心の整理をつける事ができ、ようやくその別れに返事を返す事ができた。

 惨めなものだ。自身の先行き不透明な未来に不安を感じて体調を崩し、そうして恋人に失望され別れを切り出された。

 互いに思う所があって、それを口に出して意見のすり合わせを行えばきっと避けられた出来事なのだろう。しかし、現実はそれが出来るほど私達は互いの事を話そうとも、知ろうともしなかった。

 その責任は私にあるし、向こうにもある。どちらが悪いかの話ではない。どちらにも非があるのだ。

 最もこれは私の視点からの話なのであって、向こうにとってはそうではないのだろうが。

 

 そんな私は今、恋愛小説を書いている。

 

 高校時代、互いを憎からず思いつつもそれを口にできずに時間が経った二人が、再び再開してかつて踏み出せなかった1歩をお互いに踏み出そうとする話。

 未練の塊、私自身の願望の塊だ。

 

 こうあって欲しかったという未練と、こうなってほしいという願望が文字となって浮かび上がった、私のエゴイズムに基づいた作品だ。

 

 我ながら女々しく、そして情けない話だ。

 

 これから先もう二度とあの人と私の人生が交わることはなく、そして再び会うこともないのだろうなと思い。

 

 未練がましく残った私の恋心を、この小咄に封じようと思う。

 

 

 

 いつか再び恋をしたとき、この時のことを思い出せるように。

 

 

 

 願わくば、あの人の人生が、

 

『めでたし、めでたし』

 

 と、ハッピーエンドで終わりますように。

 

 初恋のあなたへ。

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