第8話 国境を越えて(11月28日加筆修正)

現在、ライトは手にした石を上に投げながら歩いてる。

少しくすんではいるが、親指の先くらいの大きさの綺麗な赤い石だ。

アンが言うには、これは魔核と言うものらしい。魔物の心臓部分にあった物で、ホーンラビットを解体した時に出て来た物だ。街に行けば買い取ってくれるとらしいので、ついでにゴブリンの魔核も取り出し持って来たと言う訳だ。

「つかアンさんや。何でそんな事を知ってるんだ?」と聞くと


「妾の従者がたまに町へ売りに行くからの。」


と答えた。従者?街に売りに行く?ライトの頭の中で、アン=お姫様?の図式が描かれる。


「アンって、召使とか雇ってるんだ?」


「召使と言うか・・・ま、似たようなもんじゃな。」


「ふ~ん。」と微妙に納得するライトだが、そもそもそんな事すら知らなかったのでライトとしては有難かった。

そんな会話をしながら二人で歩いていると、大きな川に出た。

対岸までは約10mはあるだろうか。結構な距離があるし、川の流れが速く深そうでこのまま渡る事は出来ない。

「ならば、どこかに橋があるはず」と思い、ライトとアンは川沿いを歩く事に。


川沿いを歩き始めて二日目。やはりと言うか、前方に橋が見えた。

ただ、その橋は石造りで、こちら側にも対岸側にも砦が建っている。要は、国境検閲所だ。

このまま川沿いを歩くと怪しまれるので、一旦引き返し、迂回して街道まで出る事に。そうして見えて来た砦の門前には兵士が立っており、砦に入る人達を監視している。

砦に入った人は、暫くすると橋の方へと出て対岸へと渡る。ここを通過出来れば、とりあえず安心だろう。

ただ、あの兵士達が追手の可能性もある。場合によっては、魔法をぶっ放して逃げなければならないかもしれない。


そんな事を考えつつも、ライトとアンは砦へと近付いて行く。

流石に10歳前後の子供二人が、親も連れずにこんな所にくれば兵士も怪しむのだろう。ライトとアンが砦に入る直前で兵士に声を掛けられる。


「おい、嬢ちゃんと坊主。親はどうした?」


いきなり掛けられた声にビクッとするライト。アンは「妾」とか「のじゃ」と言う為、ライトが答えなければならない。

兵士は二人の目線まで腰を屈めて顔を覗き込む。どう答えようかと考え、咄嗟に出た言葉が


「え・・・えっと、父さんのお使いで、向こうの町に届け物があるんです。」


だった。


「そうか、お使いか。偉いな。だが、あっちに入るのに一人銀貨2枚程取られるがちゃんと持って来てるのか?こっちに戻る時も一人銀貨2枚が必要だぞ?」


なるほど。ここを通るには銀貨が必要らしい。そもそも身分証が無いからどうしようかと思ったが、それだけで済むなら大丈夫そうだ。


「一応、お金は貰って来ました。帰りの分も。」


「そうか。ここら辺は魔物は出ないが盗賊は出るかもしれない。気を付けて行くんだぞ。」


「うん、わかった!兵士さん、ありがと。」


そう言うと、兵士はサッと立ち上がり、手を振ってくれた。

ライトもそれに応え手を振るが、心臓はバクバクだった。そして、嫌な汗が背中を伝っている。


なんとかこちら側の扉を潜り、橋を渡る。

そして、反対側の扉の前へとやって来ると、またしても兵士に声を掛けられる。


「嬢ちゃんと坊主、通行料として一人銀貨2枚必要だが持ってるかい?」


ライトはマジックバックに手を入れ、収納から銀貨を4枚取り出す。


「はい!ちゃんとお父さんに貰って来たよ!」


そう言って兵士に銀貨を手渡す。


「丁度、4枚だな。ようこそフィッセル王国へ。この近辺には魔物は居ないが、町までの間には魔物が出るかもしれない。気を付けて行くんだぞ。」


そう言うと兵士は次の人に話し掛ける。

この国はフィッセル王国と言うらしい。村があったオラリオン王国では無かったみたいだが、とりあえずブラスの国からは出る事が出来た。

国境から離れた町まで行ってとりあえず強くなろう。アンを屋敷まで送るにしても、自分自身が強くならないと送れないしな。そんな事を思いながら、ライトとアンはフィッセル王国の地に足を踏み入れる。



国境を越えてから半日程行くと、デッケルと言う町に到着する。

流石に町に入る為には身分証が必要らしく、身分証を持ってない二人は門兵に連れられ門の隣の小屋へと入る。


「さて、仮身分証を発行するから、この板に手を置いて。」


それはシモの所にあった物と同じ様な板だった。


(ヤバい!これ奴隷ってバレるんじゃないか?)


内心でライトは焦る。しかしそうは思うが、ここまで来たら引き返す訳にはいかない。ライトは意を決し板の上に手を置く。


「はい、もういいよ。犯罪履歴は無しっと。ま、子供が犯罪を犯す訳はないんだけどね。一応、やらないといけないからな~。坊主名前は?」


そう苦笑しながらも、門兵の人は作業を続ける。

単に犯罪履歴があるかないかの確認だけだったらしく、アンも問題無く手続きが済み町に入る為の税として二人分の銀貨2枚を支払うと、仮身分証であるライトとアンの名前の入った羊皮紙を受け取り町へと入る。

仮身分証で滞在できるのは今日から5日間。5日過ぎても町に滞在しており、その後再登録し料金を支払わないと不法滞在として捕まってしまうらしい。

その代りと言っては何だが、冒険者ギルドで冒険者登録をするか商人ギルドで商人登録すれば、身分証が貰えるので税は取られないし不法滞在にもならないそうだ。

現状は税を払い仮身分証があるので、とりあえずそれは置いといて、今日の宿を探さないといけない。

門兵の人に聞いたところによると、町に入って直ぐの所にある『門前宿亭』かその数件先にある『旅人の酒亭』が安全で安いと聞いた。


ライトとアンは、とりあえず一番近い門前宿亭へと向かう。向かうと言っても、直ぐそこだ。本当に門の目の前にある。

ちなみに、ライトは字が読める。流石は村長の孫といった所だろう。5歳の時から読み書きは教えられ、多少ならば書く事も出来る。

その為、宿の名前くらいは読める。


宿に入ると、恰幅の言い女性が対応してくれた。名前をシーラと言い、この宿の女将だ。

丁度二人部屋が空いてると言う事なので、二泊分の銀貨4枚(一泊二食付きで一人銀貨1枚)を支払い鍵を預かる。

何故二人部屋かと言うと、一応アンとは兄妹と言う事になってるからだ。念の為に言っておくが、ライトが兄でアンが妹の設定だ。

何故ライトが兄設定かと言うと、アンを姉にすると「妾」や「のじゃ」で喋る為、余計な事に巻き込まれそうな予感が犇々ひしひしとしたのだ。しかもその姉を差し置いて、弟が喋るのもおかしな話でもあるし。なので、そこは譲れなかった。

丁度、背もライトの方が少しだけ高かったので、兄と言うには丁度良かったのもある。


部屋は3階の角部屋。

ベッドが二つ置いてあり、それ以外は何も無い部屋。

今日は時間も遅いので、実際に動き始めるのは明日からだ。

1階の酒場兼食堂で久々の暖かい食事を摂ると、部屋で明日の打ち合わせを済ませて二人共ベッドにダイブした。



翌日

朝食を食べ準備をすると、先ずは服を買いに行く。

村でライトが着ていた服は、村の年長者のお下がりか、母親が商人から布を買って縫ってくれた物だ。そして、現在はダナの服を何とか着ている感じだ。

そんな訳で、生まれて初めて買う服に、母親の様な女将に「普通はどう言った所で服を買うのか」と事前に聞いていた。

女将の言う事には、身分の高い人は見栄もある為仕立て屋で購入するらしいが、仕立ての服はかなりの値段がするらしく一般市民には手が出ないそうだ。

ではどうするかと言うと、古着屋で買うのだそうだ。

ただ、子供用の服は量も少ないらしい。

理由は、汚れや破れ、ほつれなどであまり出回らないからだそうだ。

とは言え、全く無い訳では無いので、女将の知り合いの古着屋を教えて貰う事に。


しかし店に着き、古着を物色したライトは愕然とする事に。

何故なら、ライトが着れる服が全く無かったのだ。いや、無い訳では無いのだが、小さいか大きいかの両極端しかなかった。要は、全くサイズが合う服が無いのだ。

ただ古着屋に行く最中に「コピー」と言い続けていたからか、裁縫のスキルを手に入れたっぽい(それ以外にもコピーしていたが)ので、少し大き目の服を上下3着程購入し、古着屋の店員に針と糸を売ってる場所を教えて貰った。手直しすれば何とかなるだろう。

ちなみに、アンの服は何とか宥めて4着程選ばせた。初めに手に取った、見た事のないデザインの黒いヒラヒラがたくさんついた服含めてだ。

店の人の説明では、メイド服に似せて作ったゴシックドレスと言う服らしい。

何でも、どこぞの貴族令嬢がしつらえた物が払い下げになり、市場に回って来た服なのだそうだ。

しかし、何と言うか・・・かなり悪目立ちしそうな感じの服だ。

「本当にこの服を着るの?」とアンに聞いたが「元々妾はこれに似た服を普段着ておったのじゃが?」と、無い胸を逸らして言う。

普段着でこんな服着てたんだ・・・そりゃ捕まるわ。そう思うライトだったが、そこはグッと堪えた。


しかし一つ難点がある。この服を着ると、奴隷紋が丸見えとなってしまうのだ。それは流石にマズいので、小声でアンにその事を伝えて宥め、普通の服も買って貰ったと言う訳だ。


その後、靴やら下着やらも買い揃え、〆て金貨1枚と銀貨37枚ほどのお支払いとなる。

内訳は、ライトの上下と下着と靴、針と糸で銀貨25枚。アンのゴシックドレス1着と普通の服3着。下着と靴で金貨1枚と銀貨17枚。


支払いを済ませたライトの目には、一滴の汗が流れていた。




名前 : ライト

年齢 : 10歳

レベル: 15

経験値: 11%/100%(UP)

体力 : 68

魔力 : 95

筋力 : 78

精神力: 77

瞬発力: 50

スキル:

採取LV1


固有スキル:

▲コピーLV3

派生スキル:ペースト


剣術LV4・槍術LV2・格闘LV2・弓術LV3・棒術LV2・盾術LV3・鑑定LV6・収納LV4・気配察知・気配遮断・身体強化LV4・俊足LV2・魔力操作・調教LV3

精巧LV:2・料理・採取LV1・奴隷術LV5・乗馬・操車術・帝王学LV2・算術・商才・隠蔽LV4・結界術LV4 ・裁縫LV5(NEW)・弁術(NEW)・交渉術(NEW)



火魔法LV3

LV1:ファイヤーボール、ファイヤーアロー

LV2:ファイヤーボム、ファイヤーウォール、

LV3:フレイムアロー、フレイムジャベリン

水魔法LV3

LV1:キュアウォーター、ウォーターアロー

LV2:アクアスラスター、ウォーターボム、キュアポイズン

LV3:アクアヒール、アクアジャベリン、アクアウォール

生活魔法:クリーン、ドライ、ライト、ウォーター

時空間魔法LV2

LV1:スロウ

LV2:エリアスプレッド

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