第6話 捜索隊(11月28日加筆修正)

ライトがブラスに買われてから8日経った頃、シモが奴隷商を営むビザード帝国領ミスノーアの街は大騒ぎになっていた。

その原因は、侯爵家三男のブラスが依頼に向かったまま行方不明となっていたからだ。

そう、この街は侯爵家所領の街であり、ブラスはその侯爵家の三男だったのだ。


「おい!捜索隊に加わる冒険者は揃ったのか!」


「はい!参加する冒険者は、現在南門へと向かっております!」


ランクC

オークファイターの討伐

南の森の中にオークファイターが引き連れたオーク数匹の群れの目撃情報

依頼達成期限

依頼を受けてから6日


この依頼を受けたブラス、ダナ、アデラの三人が期限を過ぎても報告に来ない。

不審に思った冒険者ギルドのギルドマスターが、「もしかして坊ちゃんは報告を忘れてるのか?」と思い侯爵家へと報告。

しかし、ブラスは侯爵家にも戻って来てはいない。「これは一大事だ!」と言う事で、捜索隊が結成された。と言う訳だ。


「これより、南の森へと向かう!捜索隊は速やかに進軍開始せよ!」


侯爵家騎士団60名とCランク以上の冒険者23名が南の森に向かい進み始める。

街を出発したのは昼前頃。騎士団は馬に騎乗しているが、後ろに続く冒険者達は徒歩だ。必然と進軍速度は遅くなる。

該当の森の入口に到着した頃には、既に日が傾きそろそろ夜の帳が降りようとする頃だった。

捜索隊はその場で野営の準備に取り掛かる。

騎士団は幕舎を建てその周りに騎士のテントを建てる。冒険者達は各々が持参したテントを建てている。その後、騎士団から支給された食事を摂った一行は、明日から始まる捜索の為身体を休めた。


変わって翌日。

一行は身支度を整えると、森の中へと足を踏み入れる。

そもそもこの森は、そんなに強い魔物は出て来ない。強いて言えば、強い魔物はオークくらいなのだが、稀にオークから進化したオークファイターやオークアチャー、オークメイジなどが生まれるくらいだ。

そんな森を固まって歩く事三時間。一行はブラス達がオークと戦った場所へと到着する。

そこは地面や木々に未だ血がこびり付いており、壮絶な戦いがあった事が伺い知れた。しかし、その戦いを行ったであろう者達の痕跡死骸が全く無いのだ。

一部のオークは、アデラの魔法により木っ端みじんになってはいるのだが、それにしてもライトが倒したオークファイターの死骸すらも無い。

そして、ブラス、ダナ、アデラの姿も無い。


捜索隊は、何か痕跡が無いか周囲を調べる。それから暫くののち、戦場となった場所から少し奥に入った場所で、ギルドタグが見つかる。


「ランクC。ダナのギルドタグだ。」


それを見つけた冒険者は、プレートに刻まれている文字を読みそう呟く。

その後も近辺を捜索するが、ブラスとアデラの痕跡は見つかる事無く今日の捜索は打ち切られた。


翌日

再び森へと入った捜索隊は、ダナのタグを見つけた近辺から更に奥に入った場所を重点的に捜索する。

そして昼過ぎ、遂にブラスのタグを発見する。


「あったぞ!」


そのタグの発見により捜索は一旦打ち切られ、翌日にはエリシュカの街へと帰還する。そして捜索隊からもたらされた報告に、侯爵は激怒する。


「あれだけ多額の金や高価なマジックアイテムを支援をさせておきながら、そのアイテムを紛失させるとは何を考えておるんだあのバカ息子は!おい、あれが使っていた武器や防具、マジックアイテムを探し出せ!あれは、侯爵家の財産だ!他の者が見付ける前に、一つ残らず探し出せ!」


その号令と共に、騎士団は再度森に向かう事になる。

そもそも、その貴重なアイテム類はライトが持っている。なので、虱潰しに捜索しようが何をしようが見つかる筈も無い。

それに、あれだけの人数で虱潰しに探した結果、タグ以外の物が見つからなかったのだ。更に時間を掛けて探した所で無駄だろう。しかし、そんな事は兵士も、侯爵すら知らないし、命令は絶対だ。

騎士団は渋々森に入り、一月程捜索をするが何一つ発見される事はなかった。代わりに見つかったのは、最後の行方不明者であるアデルのタグだけだった。





そんな事が起こっているとは露知らず、人に会わないように街道から外れた道無き道を歩きつつライトの旅は順調に進んでいた。

ただ地理感が無いため、何処に向かっているのかは全くわからなかったが。


そんなある日の事。

いつもの様に街道を外れ道無き道を歩いていたライトの耳に、雄叫びが聞こえた。


「何だ?」


ここは街道から外れた森との境目。

こんな所にいる奴は、冒険者か盗賊くらいしか居ないだろう。

ライトは声が聞こえた方へと走り出した。



現場に着くと盗賊と思わしき汚らしい身成りの男達20人程が、その男達よりも少し身成りの良い格好をした男達7人と斬り合っていた。

その男達の後ろには、立派な箱馬車が一台と幌馬車が一台。そして、俺達が街に行く際に乗せられていた鉄格子付きの檻馬車が止まっていた。


「馬車の方は、奴隷商か?」


悪徳奴隷商が盗賊に襲われたと言うところだろう。

しばらく様子を見ていると、多勢に無勢だったのか奴隷商の部下だろう男達は全員盗賊に殺された。

その後、箱馬車の中に乗っていた奴隷商人らしき男が引き摺り出される。そして、盗賊に何か言っていたようだが問答無用で切り殺された。

斬った男は奴隷商人の懐をゴソゴソとし始める。そしてお目当ての物があったのか、ニヤニヤしながら馬車に近付いて行く。

一頻り馬車を物色した男達は、幌馬車に乗る。そして、盗賊は箱馬車と檻馬車から馬を外すとその馬に跨り、幌馬車を先頭に森の中へと消えていった。



盗賊達が消えた後、ライトは気配遮断を解き馬車へと近付いて行く。殺されたのは、奴隷商人を含む11人。3人は御者で、7人が護衛の部下だろう。

既に金目の物や武器の類は全て盗賊が持ち去っている。流石に邪魔だと判断したのか、箱馬車と檻馬車は放置だ。

ライトは再び気配遮断を使い、盗賊の後を追った。




盗賊のアジトは、洞窟の中だった。しかも上手く蔦や葉で隠されており、良く目を凝らして探さないと分かり辛い場所だ。

流石に馬車は入らない様で、入口に馬車を止めると手下が洞窟へと荷物を運び始める。

ライトは、見つからないように少し距離を取ると、どうするか悩む。

何を悩んでいるかと言うと、見た感じ盗賊の頭はライトよりも弱いだろうから、多分倒そうと思えば倒せると思う。ただ、やるとなると少々数が多いのだ。

そんな事はないだろって思うかもしれないが、実はオークファイターを倒した際にレベルアップしていたのだ。

ちなみに今のライトのレベルはと言うと


名前 : ライト

年齢 : 10歳

レベル: 14

経験値: 41%/100%(UP)

体力 : 64

魔力 : 89

筋力 : 73

精神力: 72

瞬発力: 47

スキル:

採取LV1


固有スキル:▲コピーLV3(NEW)

      派生スキル:ペースト(NEW)


剣術LV4・槍術LV2・格闘LV2・弓術LV3・棒術LV2・盾術LV3・鑑定LV6・収納LV4・気配察知・気配遮断・身体強化LV4・俊足LV2・魔力操作・調教LV3

精巧LV:2・料理・採取LV1・奴隷術LV5・乗馬・操車術・帝王学LV2・算術・商才・隠蔽LV4(NEW)・結界術LV4 (NEW)


火魔法LV3

LV1:ファイヤーボール、ファイヤーアロー

LV2:ファイヤーボム、ファイヤーウォール、

LV3:フレイムアロー、フレイムジャベリン

水魔法LV3

LV1:キュアウォーター、ウォーターアロー

LV2:アクアスラスター、ウォーターボム、キュアポイズン

LV3:アクアヒール、アクアジャベリン、アクアウォール

生活魔法:クリーン、ドライ、ライト、ウォーター

時空間魔法LV2(NEW)

LV1:スロウ

LV2:エリアスプレッド


情報を見た時はビックリしたライトだが、オークファイターを倒しただけでこんなにもレベルが上がるとは思えない。もしかすると、ダナとアデルがオークファイターに巻き込まれて死んだ為、二人を倒した事になっている可能性も否めない。

ま、それはともかく、気が付いたらレベルがかなり上がり体力や筋力が増えていた訳だ。

確かにシモの所から出た後と比べれば疲れ難くなってる感じはするし、死体を見ても前ほど気持ち悪いと思わなくなっている。「こんなヒョロヒョロなのに?」と不思議でならないが。


それと、時空間魔法はマジックバックから。隠蔽と結界術はテントからのコピーだ。

ダメ元でコピーしたら、スキルがコピー出来た。これにはライトもビックリだった。


それと、コピーのレベルが上がり派生スキルが増えた。


コピーLV3

スキル使用者が触れた者(物)若しくはスキル使用者の半径1.5m以内に入る者(物)からスキルをコピーし、コピースキルとして使用する事が出来る。既にコピー済の同じスキルをコピーした場合、高いスキルレベルに置き換わる。

魔法をコピーした場合、コピー元が使用出来るスペルもコピーされ使用可能になる。

発動する際はスキル名を言わなければならず、念じるだけでは発動しない。

※固有スキルはコピー出来ない。

※コピースキルのレベルは上がらない。

※同じ対象者には一度しか使えない


・派生スキル:ペースト

任意のコピースキルをスキルとして貼り付ける事が出来る。貼り付けたスキルは、レベルアップの対象となる。

また、任意のコピースキル若しくはスキルを他人のスキルへ貼り付ける事が出来る。

※ペーストを使用しても、コピー元のスキル自体は消えない。


コピーしたスキルを、普通のスキルとして使える様になるみたいだ。更には、他人にスキルを渡す事が出来る様になったみたいでもある。

ただ、このスキルがバレるとまた奴隷に逆戻りしそうな予感しかしない。だから、確実に隠しておかないと。そう思うライトであった。


それと、何もスキルが無いのも怪しまれるかもしれないと言う事で、早速採取スキルをペーストしてみた。


それはさておき、盗賊の親玉のステータスはと言うと


レベル: 12

経験値: 68%/100%(UP)

体力 : 74

魔力 : 42

筋力 : 49

精神力: 64

瞬発力: 41

スキル:

剣術LV2・短剣LV1・斧LV1・身体強化LV2

絶倫


と、まあライトと比べて体力は負けるが、筋力は勝ってるって訳だ。スキルも少々ショボイ。


「つか、筋力が10歳の子供に負けてる大人ってどうなのよ?」


ついそう呟くライトだが、それはともかく親玉以外にも下っ端が何人か居るが、ファイヤーボムで事足りそうな気もしないでもない。

このまま突入するよりかは、盗賊達が寝静まる夜中まで待った方が得策と結論付けたライトは、この場で待機する事にした。


「てか、絶倫って何だろ?」と疑問を一つ残して。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る